鎌倉彫 上村一渓

今回ご紹介するのは、「鎌倉彫」の彫刻家、上村一渓(かみむら いっけい)さんです。

上村さん

伝統的工芸品、神奈川県の鎌倉彫についてはこちらの記事をご覧ください。

ろくろ細工に彫刻を施した一般的な「鎌倉彫」から、板や木の破片を形作って小物を作り出す工芸品まで様々な制作を行っている上村さん。新しいことへの取り組みも臆さず、ものづくりを心から楽しむ人柄が魅力的な職人です。

インタビューの内容を、制作者の温かい想いが溢れる作品の数々とともにお送りします。

上村さん14

――鎌倉彫をはじめたきっかけは何ですか

高校のときから「工芸クラブ」に入っていて、自己流ですが、好きで彫刻を行っていました。その後二十歳ぐらいのときに父の転勤で横浜へ引っ越し、「鎌倉彫」に出会いました。数年お稽古に通った後、23歳から内弟子として働かせてもらえるようになり、そのときからプロとして制作を続けています。

上村さん2

――普段のお仕事の内容を教えてください

内弟子で入っていた時は、お稽古に来る生徒の方々の作品の手直しやお店に置く品物作りを行っていました。一日8時間くらいです。

仏様 仏様

仏様の彫刻(全長4cm弱)だと、一日二体くらい作れます。初めの頃は慣れないため一日一体しか作れませんでした。

――制作のどこが好きですか

ゼロから作れるところが良いですね。仕事ですが、自分自身楽しんでものづくりをやってます。木を彫る音も好きです。

彫刻 彫刻

材料が揃い、何にするか、何を入れようかが決まれば作品が作れます。小さな木材でもくり抜いて小物入れにすることができます。

――上村さん「ならではのもの」とは

「鎌倉彫」と呼ばれるものは、ろくろで挽いた木材に彫刻を施したものです。しかし、そうするとある程度形が限られてしまうので、私は自分ではじめから造形するということもやっています。

 鎌倉彫 作品

(ろくろで挽いたもの、上村さんが羽子板型に彫ったもの)

丸いものを作る場合は、ろくろで挽いて貰った方が正確で綺麗です。一方で、自分で一から作る場合は自由な形にできます。

~作品紹介~

 お雛様

お雛様

作品

香合(お茶の道具で、お香を入れるもの)、もしくは小物入れ

作品

小物入れ。

鎌倉彫 小物入れ。細かい彫刻が潰れてしまわないように漆を塗るのがポイント。

作品

歌舞伎の隈取りが彫られた作品。

~最後に~

高度な技術や知識だけでなく、制作への熱意や愉悦も長年職人たちが継承している「伝統」です。素材の持ち味と、優れた技術、そして職人の想いのすべてが込められてこそ、逸品が生み出されるのでしょう。上村さんの工芸品はそんな感動を手に取る人に与えてくれます。

 

【プロフィール】

上村 一渓(カミムラ・イッケイ)/鎌倉彫
愛媛県松山市出身。横須賀市在住。鎌倉彫の制作とお教室を開いている。
ご主人が漆塗り職人だったため、かつては自宅で彫りと塗りの両方が行われていたそう。

 

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