千葉県指定伝統的工芸品である「江戸組紐」は、効率よく品質の高いものを生産するために、分業により多くの職人が関わって作られています。
組紐の工程は、糸割り、染色、経尺(へいじゃく)、撚りかけ(よりかけ)、組み、切り房・切り房付け、仕上げに大きく分けることが出来ます。
今回は、組紐が完成するまでの工程をご紹介します。
(江戸組紐をつくる中村航太さんの記事はこちら「江戸組紐の老舗「江戸組紐 中村正」4代目 中村航太」)
組紐の歴史
縄文土器に撚り縄を使った紋様が施されていることから、この時代から紐の歴史が始まったと言われています。
奈良時代には、仏教伝来とともに大陸から組紐の技術が伝えられたとされ、経典や袈裟などに使われていました。正倉院に残された箜篌(くご)という楽器には、古代紐が飾り付けられています。
平安時代になると、組紐は王朝貴族の装束に欠かせない束帯に用いられていました。
鎌倉時代には武士の武具に、室町時代には茶道具の飾り紐にと、活用の幅を広げていきます。
戦国時代には、鎧の縅糸(おどしいと)などに用いられ、江戸時代には刀剣の下箱の飾り紐として需要が急増しました。そのため、自然と武具装身具の職人も幕府の保護を受けて江戸に移住していきました。お互いに技を競い、組み方も多種にわたり、印籠やタバコ入れにも利用されるようになります。
明治時代になり、廃刀令で痛手を受けて衰退しますが、明治35年以降に和装の普及によって復活し、現在に至ります。
組紐の工程
1)糸割り
必要な量ずつ絹糸を秤(はかり)を使って分けていきます。
2)染色
調合した染料に糸を浸して色付けをします。写真は大正時代の組紐です。化学染料を原液のまま使うことでこのような蛍光色を出すことが出来ます。
3)糸繰り
染色した糸を小枠(こわく)という巻き芯に巻き取ります。
4)経尺
糸繰りされたものを、必要な太さ・長さに測り、合糸(ごうし)といって複数本の糸を合わせていきます。
5)撚りかけ
合糸されたものを機械にかけて撚ります。
6)組み
様々な組台を使って、組紐を組み上げていきます。丸組、平組、角組のうち、作りたいものによって台を使い分けます。
7)仕上げ
端を決まった長さにさばき、ゆるまないように房を仕上げていきます。
ここからは、「組み」の工程をクローズアップしてご紹介します。
まず、撚りかけされた糸をまっすぐになるようにほぐしていきます。とても神経をつかう作業ですが、するするとほどいていく姿はさすが職人です。
次に、端を固定して広げていきます。広げながらも撚りをしっかりと直していきます。この工程をなくしてしまうと、完成した時にガサガサした肌触りになってしまいます。(写真は丸台の場合)
広げたら、固定した方とは逆の端に下の写真にある玉をつけて巻き取り、準備完了です。
糸の準備ができると、いよいよ組んでいきます。組みに使われる組台には様々な種類があり、組台によって出来あがる形・柄が異なります。中でも丸台と綾竹台について、それぞれどのような特徴があるかご紹介します。
丸台(まるだい)
丸組みと平組みができます。指で糸を運んだり引っ張ったりするため感覚が養いやすく、初めは丸台を経験するのが良いと言われます。
綾竹台(あやたけだい)
ヘラで打ち込みながら組んでいきます。伸びが少なく、ざっくりとした締めやすい平組の紐が出来上がります。
軽快に紐を組みながらも、一本一本の撚りをとっていきます。これをやるかやらないかで完成したものの肌触りに違いが出てきます。
この作業を繰り返し、数週間かけて1本の組紐が完成します。
組紐の種類
色の違いはもちろんのこと、様々な柄も組紐の魅力のひとつです。ここでは、いくつか名前とともにご紹介します。
〜最後に〜
こうして手組みで作られる組紐は、他にない締めやすさを生み、愛着が湧いてくるものです。お見かけした際には、ぜひ手にとってその良さを実感してみてください。