日本の伝統楽器「三味線」が出来るまで

三味線

三味線は、日本の伝統芸能において古くから使われてきた、この国固有の弦楽器です。
中でも東京三味線は、胴作りを除く全ての工程を1人で行っています。
14世紀末から受け継がれてきた三味線作りとは、いったいどのようなものなのでしょうか。
今回は、三味線職人の伊東孝夫さんの制作工程をご紹介します。

(伊東孝夫さんの記事はこちら「限界を見極めながら三味線作りを−石村屋 伊東孝夫−」)

◎三味線の歴史

三味線の祖は中国の三絃にあり、14世紀末に元から琉球国を経て、室町永禄年間に大阪の堺に渡来し、当時、琵琶法師が小唄や踊歌に合わせて演奏していました。三味線は西洋音楽と異なり、声を重視した音楽として発展していきます。清元・義太夫・常磐津などは「語り物」、長唄・端唄・地唄などは「歌い物」というように大別されます。

◎各部名称

各部名称

◎皮張りの工程

ヤスリがけ

ヤスリがけ

胴のノリ付け部分をヤスリでなめらかにします。

皮を湿らせる

湿らせる

湿らせた手ぬぐいで皮を巻き込むようにして、湿り気を持たせます。

皮にキセンをつける

キセン付け
キセン

キセン

皮の四面にキセンをかまします。キセンとは、木で出来た洗濯バサミのようなものです。

ノリ付け

ノリ付け

胴に皮を張るためのノリをつけます。ノリは、食用の白玉が使われています。他にも餅が使われることがありますが、理由は、科学的なノリでは乾燥が早く、後の工程で皮を伸ばしている間に固まってしまうため使えないからです。

白玉

白玉をヘラで練って作る

皮を胴につける

貼り付け 貼り付け

皮が乾燥しないよう、手ぬぐいで湿らせたまま胴のノリ付けした上に皮を乗せ、縄を台とキセンに交互にかけていきます。

縄を張る

縄張り

皮の厚さ、薄さを見極めながら縄を張って皮を伸ばしていきます。より強く張ることで、良い音の出る三味線ができるため、全工程の中でもその職人の技術力が試されるところです。

クサビを入れる

クサビ

強く張るために台の間にクサビを入れ、乾燥させます。一般的には台を2枚使いますが、伊東さんは3枚使います。3枚にすることでクサビを入れる箇所が増え、より細かく縄のテンションを調整できるからだそうです。

皮を切り取る

切り取る

乾いた後、縄を取り除き余分な皮を切り取ります。

ノリを付け皮を張る

皮を張る

胴の周りにノリを付け、周りの皮を張ります。

皮を切り取る

整える

切り口を整えながら、余分な皮を切り取ります。

バチ皮を張る

バチ皮を張る

表面にバチ皮を張ります。バチ皮とは、バチの当たる箇所に貼る半円形の補強するための皮です。

完成

完成

胴と棹をつなぎ、糸・駒・胴掛けをつけて完成です。

◎使われる皮の種類

犬や猫の皮が使われます。犬の皮はタイから、猫の皮は台湾から輸入しています。最近では、カンガルーの皮が実用化に向けて研究されています。それは、オーストラリア政府が増えすぎたカンガルーの間引きを行っており、安価に安定供給されているためです。しかし、犬や猫の皮と性質が異なることから、まだ研究段階となっています。

〜最後に〜

変わらない確かな技術によって作られる三味線は、今日も日本の伝統芸能を支えています。日本が世界から注目が集まる今、伝統的な楽器にも触れ、貴重な文化を後世に残していきたいですね。

三味線

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