夏場は窓際に設置し、日差しを避けながら風を通すために活用し、一石二鳥で古くから伝わる道具であるのが簾(すだれ)です。
現在も和風の住宅などで使われているのを目にすることがある簾は、どのような歴史や用途があるのでしょうか。
今回は、簾の魅力を歴史や用途と共にご紹介します。
◎簾の歴史
簾は、古い歴史を持つ日本を代表する道具の一つです。
“簾”という言葉は、7世紀後半から8世紀後半ころにかけて編まれた日本最古の和歌集で登場しています。平安時代には、多くの貴族が使用しており、当時の建築構造では現在のドアや引き戸のような仕切りがなかったため、簾の原形である御簾(みす・ぎょれん)を使用していました。
当時使用されていた御簾の多くは、現在主流となっている簾に布地で出来た縁をつけ、房を垂らしたものでした。高級品であったことから貴族の間で使用されるようになり、竹や葦(よし)のみで作られるようになってから一般市民へも浸透したと言われています。
◎「夏の風物詩」
夏の風物詩としても知られる簾は実に多くの用途があります。
日除け
簾を窓際に立てかけておくだけで、夏の厳しい日差しが部屋にさすのを防ぎ、室内の温度の上昇を和らげてくれます。立てかけるタイプとは別でカーテンレールやブラインドのように取り付けることが出来るものも近年出てきています。
断熱効果がある簾は直射日光を遮るだけではなく、簾に水をかけることで隙間を通る空気が冷やされ、涼しさを増すという冷却効果もあります。
虫よけ
簾は日除けはもちろんながら、虫が室内に入ってくることも防いでくれます。今は網戸が付いている家が多くなりましたが、網戸の歴史は比較的浅く、50年前までは簾を虫よけとして活用していました。
目隠し
日本家屋にはカーテンレールはもちろん、窓も無いところが多いです。その中でプライバシーを守るためにも簾は使用されていました。
◎冬も助けてくれる
夏場に活躍するイメージがある簾ですが、実は冬場も活用することが出来ます。
室内でエアコン(暖房)やヒーターを使うとどうしても室内外の温度差で窓が結露してしまいますが、窓の内側と外側に簾を配置するだけで、結露を防ぐと同時に外からの冷気が入るのを抑えてくれます。
◎調理器具としての簾
窓の外、または軒先にあるものという認識が強い簾は、実は調理器具としても使われています。
その代表格は「巻き簾」。海苔巻きやお正月になると見る機会が多くなる伊達巻を作る際に使用されます。
その他には「京すだれ」やざるそば用の「丸竹すだれ」などがあります。
(写真撮影@㈱田中製簾所)
〜最後に〜
簾は夏の物、とイメージしがちではありますが、調理器具として身近にあったり、冬場も活躍します。近年のアジアンブームで簾の活用は見直され、簾を室内にワンポイントとして置くことにより癒やしを求めたり、コースターやランチョンマットとして活用するなど新しい使い方もあります。
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