千葉県の伝統的工芸品である「房州うちわ」は、21もの工程を経て出来上がります。それぞれ分業されており、一枚のうちわが出来上がるまでに数々の人の手が携わっています。効率良く品質の高いものを生産するには、個々の職人の連帯と手際の良さが必要です。
工芸品としての歴史や、竹うちわの魅力、産地についてはこちらの記事を御覧ください。
今回は、「房州うちわ」の出来るまでの工程をご紹介します。
☆使用しているうちわの画像は、『うちわの太田屋』様で撮影したものです。実際の色とは多少異なっている場合がありますことをご了承ください。
1 竹の選別
材料には、房州女竹を使います。虫がおらず、竹の身がしまっている、10〜1月の寒い時期に選別が行われます。採ってきた竹は型枠に合わせて切られ、長さが揃えられます。
良い竹を選ぶことから、良いうちわ作りが始まります。
2 皮むき
刀で竹の皮を剥きます。節の部分も削ぎます。
3 磨き
籾殻と一緒に機械へ入れ、20分かけて磨きます。
磨き終わったら水で籾殻を落とし、しばらく乾燥させます。
艶がでて、手になじむ触り心地になります。
4 水つけ
8つの切れ目を入れ、下にして一昼夜浸します。
5 割竹
うちわの骨を作ります。まず、中心から8つに割きます。その後、内側の余分な肉を削ぎ落としつつ、16分割にします。それから48〜64分割にします。
特徴である細かい骨は、ここで出来ます。
6 もみ
3、4本をまとめて石やコンクリートブロックの上で力強く転がし、割かれた骨の角を無くします。
7 穴あけ
ドリルを使って、節の部分に穴を開けます。歯が折れたり、竹が割れたりしないよう慎重に行います。
のちに窓を作る穴はこの工程で開けられます。
8 編竹
開けた穴に編棒を差し込み、骨に糸を結びつけます。そのとき骨が交互になるように一本ずつ編みます。
9 柄詰
のこぎりで柄を切り、持ち手の長さを揃えた後、柄の空洞に柳の枝を詰めます。先端に向かって線ほどに細長く育つ柳の枝が一番適しています。
10 弓削
弓を取り付けます。中を太く、両端が細くなるように削いで形を整えます。
11 下窓
糸を弓の両端に結びつけます。
12 窓作り
糸を引き締めて、弓を反らせます。曲線を整えて、窓を作ります。
左右対象の美しい曲線と窓を作る重要な工程です(画像は完成品)。
13 目拾い
骨を交互に仕分けてうちわの形に広げた状態に固定します。
ここでようやく団扇らしくなってきます。
14 穂刈り
押し切りという道具で、骨をうちわの形に大まかに裁断します。
15 焼き
編んだ骨が真っ直ぐになるよう、やや中心部を火で炙って歪みを直します。
16 貼り
うちわの骨に紙や布を貼ります。刷毛で糊を骨全体に薄く塗りおもて面(柄がついた側)を貼ります。竹へらを使って骨の間隔が均一になるように整え、空気が入らないようにして裏面(白)を貼ります。
ちりめん、てぬぐい、着物の布、和紙などが使われます(画像は完成品の表と裏面)。
17 断裁
断裁機か、押し切りを使って骨を断ち、貼られた紙の形に合わせてうちわの形にします。
18 ヘリ付け
細長く切った帯状の和紙を台の上に乗せ、全体に糊を付けます。それを弓と骨の接続部分2回に分けて貼り、断裁した切り口を覆います。
ヘリには、柄に合った色の和紙が使われています。
19 下塗り
柄尻に膠(にかわ)の混合物を塗ります。ヘラを使って盛り上げるようにします。
20 上塗り
柄尻に漆を塗って色を付けます。叩くように塗ります。
うちわ屋によって朱色や青などの違いがあります。
21 仕上げ
骨の筋が浮き出るように調節しながら、一枚一枚プレス機に通していきます。
出来上がり
〜最後に〜
こうして作られたうちわは、直売店や地元のお土産屋だけでなく、首都圏のデパートやネット販売で手に入れることができます。これだけの工程が必要とされることから、生産される数は決して多いものではありませんが、丹念に作られた心地よい風をぜひお手に取ってお確かめください。
参考:
房州うちわ振興協議会制作 「安房の匠の織りなす風 房州うちわ」DVD
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