木と漆の和み、工芸品「鎌倉彫」

鎌倉彫0.5

観光地としてあまりにも有名な鎌倉。歴史ある建造物と四季折々の美しい景色の変化が人の心を引き寄せるこの地には、「鎌倉彫」という伝統的工芸品があります。

今回は、職人の上村一渓さんと『時蔵工房』さんの作品と共に、伝統技術の彫刻と漆塗りの持ち味をご紹介します。

※光の加減等で実際の作品とは多少色が異なっている場合がございますので、ご了承ください

◎鎌倉彫とは

鎌倉彫

桂の木をろくろで挽いて成形したものに彫刻を施し、その上に漆を塗った工芸品です。

鎌倉時代に作られた仏具が鎌倉彫の始まりです。茶の湯が興隆した室町時代に茶道具として珍重されるようになり、現在ではお盆、小箱、食器、手鏡に加えて様々な日用品が作られています。

◎魅力 その1:木の温もり

鎌倉彫2

磁器や陶器との違いは、人工物ではなく自然から生まれた木と漆を使っているという点です。漆は木の樹液であるため、漆で塗られた木は言わば樹液という絆創膏で外側が保護された状態です。そのため切られたときとほぼ同じ状態を維持でき、長い間ひび割れすることがありません。

木の食器

また、木の器は食器同士が当たっても耳に触る音がせず落ち着いて食べることができます。これは普段はあまり意識しないことですが、洋式のフォークとナイフで「カチャカチャ」という音を立てないように注意しながら食事をする場面を想像すれば、違いが分かるのではないのでしょうか。

◎魅力 その2:漆の特性

漆で塗られた作品

漆塗りは次のような効果があるため重宝されています。
・防水
・抗菌
・耐薬品
・熱や湿気に強い
・酸、アルカリに強い
・腐敗防止
・防虫
加えて、プラスチック加工とほとんど同じ役割を担うことが可能でありながら次のような優位な点があります。
・ダイオキシンが出ない
・溶剤が入っていない
・木の本来の特性を損なわない

 漆の朱と黒

また、漆黒と朱といった漆の独特な色も長年好まれてきました。なめらかな触り心地と落ち着いた色合いになるまでには、30回近く丁寧に塗り重ね研磨する必要があります。最近では、伝統色以外にもかなり多くの色を塗ることが可能です。

◎技法を用いた工芸品

工芸品

「鎌倉彫」の伝統的な技法に加えて、金箔や貝殻などの装飾を施した工芸品があります。趣味として漆塗りや彫刻を楽しんでいる人々もおり、伝統的工芸品の限りではなく幅広く愛されている技術であることが分かります。

鎌倉彫6

こちらは、ウクレレに漆塗りを施したものです。木材の気泡を潰すことなく自然な状態を保つため、本来持つ特性を生かすことができ、それが高質な音色を生み出すことに繋がります。

~最後に~

このように、「鎌倉彫」や「漆塗り」は見た目の美しさだけでなく、他では得られない効果や特質があってこそ選ばれてきたということが分かります。また、陶磁器が中国を代表する伝統技術であるように、漆器は日本を代表する伝統技術であり、そこからは農耕民族としてのルーツから根付く木への親しみや愛着が感じられます。そんな自然の心地よさ溢れる工芸品を取り入れ、生活のなかの安らぎにしてゆきたいものです。

 

参考:伝統鎌倉彫事業協同組合HP  

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