床の間には掛軸。部屋を仕切るには襖や屏風。目隠しの為に衝立。残すべき書物は巻物へ。
これらに共通するのは、全て同じ「表具師」が作っているということです。
これらに共通するのは、全て同じ「表具師」が作っているということです。
そして表具師が作る作品は、伝統工芸として認定され、「表具」と表します。
今回は「表具」についてご紹介します。
今回は「表具」についてご紹介します。
◎表具とは
一般的に表具とは、布や紙などを複数枚貼ることによって作られる巻物、掛け軸、屏風、襖などを指します。
表具は別名、表装(ひょうそう)とも呼ばれ、経や書画を鑑賞、保存するために裂地(きじ)や紙を貼って裏打ちする技術のことで、掛け軸・襖・額・屏風・巻物などに仕立てることでもあります。表具は生産地である各地域によって特徴があり、有名なものは「三大表具」と呼ばれています。表具発祥の地である京都の「京表具」、東京(江戸)の「江戸表具」、そして金沢の「金沢表具」です。
三大表具の違いとは?
・京表具は、京都の歴史的特色、茶の湯の美学、京都画壇(がだん)などの文化的な環境を背景に発展してきました。書画と裂地との品格ある調和が優れていることからその特徴は「雅さ」と言われています。
・江戸表具は、おおらかさが出ていることが特徴的です。また、小粋な色や模様を使うことによって、江戸の粋を表しているのも江戸表具の特徴です。
・金沢表具は「百万石文化」を反映しており、京表具や江戸表具と比べると重厚感があり、どこか渋さが際立っています。これは、金沢では格式を重んじる武家の屋敷に調和する表具が好まれたことからこのような形になったと言われています。
◎表具の歴史
表具は1000年以上も前の平安時代に中国から伝わったことを起源としています。
掛け軸や屏風などの表具の技術は、中国から仏教と共に紹介されました。そして経文(きょうもん)と言われるお経の文章や文句を記した巻物や仏画を保護し、装飾することが表具の始まりと言われています。
室町時代には寺院の床の間を真似て設ける民家が増え、桃山時代には襖や障子の普及と共に鑑賞用の表具が発展を遂げました。
当時の表具の技術は、神社寺院が集中する京都で発展し、第二次大戦以降に東京表具組合(現・東京表具経師内装文化協会)が発足し、表具・経師・内装インテリアの仕事が確立しました。
表具と経師の違いは?
・表具とは、裂地や紙を糊を用いて貼り合わせることによって掛軸・巻物・経本・書画帖・額・屏風・衝立・襖などを作り上げることを指します。
・経師は、もともと経巻の書写を業とした人や、その経巻の表具をする職人のことを指します。また、書画の幅、屏風、襖を表具する職人も経師といいます。
◎表具の種類(一部)
・掛軸:飛鳥時代以前には日本に伝来しており、床の間などに掛けて鑑賞するものであり、日本の室内装飾では重要な役割を果たしている。
・巻物:飛鳥時代に経巻として渡来し、平安時代以降絵巻として発達したもの。
・屏風:部屋の仕切りや装飾に用いる家具のことを指す。襖のようなものを数枚つなぎ合わせ、折りたためるようにしてあり、「風を屏(ふせ)ぐ」ということに由来している。奈良時代には宮中で使用されていたことが確認されている。
・衝立:日本の家屋において、パーテーション用に使用される家具。屋内において間仕切りや目隠し、風よけなどとして使用されていた。屏風は絵画で表現されるが、衝立は絵画や漆仕上げで表面的表現に彫刻が施されることが多い。
・襖:木などで出来た骨組みに紙や布を両面に張り、縁や引手を取り付けたもの。和室を仕切るのに使用されるものであり、中には「襖障子(ふすましょうじ)」や「唐紙障子(からかみしょうじ)」などがある。
・額装:江戸時代には室内用の「紙額」が生まれ、明治時代初めには「和額」の様式が確立した。
◎表具と茶の湯
日本の伝統文化の一つである茶の湯(または茶道)と表具は密接な関係にあります。
千利休によって大成された茶の湯は、茶碗や茶杓そして釜など多くの道具が用いられますが、その中でもひときわ尊重されているのは掛軸(掛物)です。これは千利休が『南坊録』の一節にて確認することができます。
「掛物ほど第一の道具はなし。客・亭主共に茶の湯三昧の一心得道の物也。墨跡を第一とす。其文句をうやまひ筆者の道人・祖師の徳を賞翫する也。…」
このことから、どの席でどんな掛軸を掛けるかが重要視され、参列者も掛軸を嗜むことが始まりました。
〜終わりに〜
表具は、中国から渡来した後に日本国内で独自の発展を遂げてきました。
そして、日本人の生活において欠かすことの出来なかった表具は時代と共に形を変えてきました。現在は、和室や床の間の減少により、「実用」から「鑑賞」をメインとする作品が多くなってきています。
しかし、変わらないのは日本の「美」や「粋」を表現することであり、それぞれの作品には独特の雰囲気があり、込められた意味や願いがあります。表具という技術によって和紙や絹に描かれている山水画や書などを後世へ残すことが出来ます。