日本独特の繊細さを活かしたい−絽ざし作家 黒川朋子−

黒川さん
黒川朋子(Tomoko Kurokawa)

山口県生まれ。日本刺繍 絽刺し作家。
海外在住中に日本文化の大切さに改めて気付き、帰国後「花と絽ざし」を主宰。着物・帯・ハンドバッグ等の制作の傍ら、教室運営をはじめとする絽刺しの普及活動も行う。
 
(絽刺しに関する記事はこちら「1200年以上続く伝統文化−絽刺し−」)

1200年以上続く伝統文化−絽ざし−

2020.09.27

日本文化の再認識

戸田秀成(以下、戸田):黒川さんが絽刺しを始めたキッカケはなんだったんですか?
 
黒川朋子(以下、黒川):絽刺しを始めたキッカケは結婚です。主人の実家が呉服屋で、たまたま近所に聖心女子大学所属の絽刺しを教えていた方がいたので習いに行くようになりました。
 
戸田:かつては公家の間で手すさびとして親しまれていたということで今もその傾向が残っているのでしょうか?
 
黒川:そうですね。絽刺しに関する文献などは、実は一冊しかないんです。その本も聖心女子大学の先生が書かれています。元々貴族の手すさびだったこともあり聖心女子大学、跡見学園女子大学、女子校の高校にいくつか授業などで組み込まれていたんです。そして教えてくださった先生は聖心女子大学の方で、その方からは技術はもちろん、歴史など教えていただきました。今も聖心女子大学や跡見学園女子大学が主体として絽刺しの普及活動などをやっていますよ。
 
戸田:絽刺しで作った作品は着物などではどのように活用されているんですか?
 
黒川:腕の部分や付下げの部分に飛ばすんです。決まりとかは特になく、どの部分が着た時に一番見えるか知っているので、その部分に付けることが多いですね。「華やかさ」を出すためにたくさんつけたり、色使いを変えたりなどやり方は色々あります。
 
また、染みなどを隠すのにも使われるんですよ。こちらは娘が幼少期来ていたんですが、染みや汚れが目立つので、その部分に作ったものを付けてみました。
 
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戸田:着物を作る作家がいて、出来上がった作品に装飾する。本当に芸術作品という感じですね。 

外から見る日本の文化

戸田:黒川さんはアメリカに2年ほど住んでいたとのことですが、なぜですか?
 
黒川:主人が留学したんです。なので、子どもを連れて家族で行きました。その時に日本の文化の大切さを再認識しました。外から見る日本。これが教室を開くキッカケとなりました。
 
戸田:その気持ち凄くわかります。
 
黒川:そして赤坂で教室を開きました。
 
戸田:主宰されている「花と絽ざし」ですね。こちらの名前の由来や主宰したキッカケはなんですか?
 
黒川:絽刺しの教室だけではなく、お花も同時にやろうと思ったんです。中学から華道をやっていましたし、池坊*1だったので。中学の時は母からの教えでやっていたんですが、渡米した際にどれだけ日本文化が大事か気付き、帰国後は自分で教えたいと思い、「花と絽ざし」を始めました。
 
黒川:日本人って器用なんですよね。日本の器用さを活かすにはどうするか。そこを考えた時にもっと普及させたいと思いました。今は、赤坂だけではなく、名古屋や京都でも開講しています。最近は荻窪(東京・杉並区)のカルチャーセンターでも教え始めたんです。これがその時の記事なんですが、大盛況なんです。
 
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色の美しさに魅了されて

戸田:絽刺しの魅力とは何ですか?
 
黒川:色の美しさや艶やかさに魅了されてしまうことですね。そしてなにより没頭してしまうんです。根気がいるんですが、集中していると雑念が消えてしまうほど没頭してしまう。そしていつの間にか作り終わる。一回集中しちゃうと何時間も刺し続けちゃいますよ。
 
戸田:刺す前の下絵はどうなっているんですか?
 
黒川:全部自分で書いてます。昔は先生が作った見本などがあったんですが、今は自分で作りたい柄を考えて書いてます。
 
戸田:自分で書く際のアイデアはどこからくるんですか?
 
黒川:昔から受け継がれている柄を応用することを第一に考えています。やっぱり、現代に合わせた柄のものを作ることによって若い人達にも興味を持ってもらいたい。でも、その中には受け継がれている部分も残したい。なので、柄について特に決まりはないので、刺そうと思えばアニメキャラクターなんかも出来ますよ。
 
戸田:いいですね。是非、機会があれば僕達のロゴもやってみたいです。
 
黒川:出来ますよ!なんでも作れる。実は大正時代なんかは男性もやっていたんですよ。今は女性の先生や作家が多いので、女性がやるものというイメージを持たれていますが、当時は有名人の絵や大正ロマンから服の裏地にこだわりたいなんて方がやってました。札入れ、名刺入れ、がま口などが作られていました。
 
戸田:かつては男性もやられていたんですね。絽刺しは取り組みやすいというのがあるのでしょうか?
 
黒川:そうですね。道具を揃え、基本的な刺し方を学べば出来る日本の伝統文化の一つであるので、是非みなさんに試してもらいたいです。小・中学生が親御さんと一緒に一つの作品を作るのも良いかもしれませんね。まず、「絽刺し」に触れてもらいたいです。
 
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戸田:「絽刺し」を普及したいと思う中、今後の目標はありますか?
 
黒川:もっと若い層に広めたいですね。どうしても年齢層が上なので。華道の方では、弟子を若くして独立させたんです。その時の経験からもっと指導者を増やしたいと思っています。私が教室を開くとなかなか若い層が教室に足を運ばないので、同年代の指導者を育成することによって、生徒の年齢層も変わるのではないかと思っています。私の娘の場合もそうなんですよ。やっぱり娘の年齢に近い生徒が集まるという傾向があるので。私は指導者を増やし、新しい指導者が生徒を抱えることによって「絽刺し」も広まるのではないかなと思っています。
 
戸田:保護するだけではなく、知る人が増え、営む人が増えることによって「絽刺し」という技術・文化の継承にも繋がりますね。本日はありがとうございました!
 
黒川:こちらこそ、ありがとうございました。
 
*1 池坊:”流”は付かず、最古かつ最大の会員数を誇る日本の華道家元。
 

黒川朋子さんの作品

五月人形を施した絽刺し

黒川さんは、日本の暦の一つであり、季節の節目である五節句に合わせた作品も作っています。
これらの作品は、自分が作るだけではなく、日にちを見て先取りして生徒さんに教えたりもしています。

五節句
人日の節句(じんじつのせっく:1月7日)
上司の節句(じょうしのせっく:3月3日)
端午の節句(たんごのせっく:5月5日)
七夕の節句(しちせきのせっく:7月7日)
重陽の節句(ちょうようのせっく9月9日)

絽刺し柄のバッグ tomoko-kurokawa-kimono tomoko-kurokawa-okame

1200年以上続く伝統文化−絽ざし−

2020.09.27

花と絽ざし
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