江戸風鈴の原点ー有限会社篠原風鈴本舗ー

2016年で創業101年を迎える「篠原風鈴本舗」は、都内に2つある江戸風鈴を作っている工房の一つであり、江戸風鈴の発祥の工房でもあります。
今回は、技術を受け継ぎ、今もなお作り続けている「篠原風鈴本舗」代表の篠原恵美さんにお話を伺いました。

(江戸風鈴についてはこちら「江戸の粋な音色を奏でる江戸風鈴」)

風を音で楽しむ「江戸風鈴」が出来上がるまで

2016.02.14

江戸の粋な音色を奏でる江戸風鈴

2016.02.12

◎篠原風鈴本舗さんの経歴を教えて下さい。

大正4年に新潟出身の初代が創業しました。一旗揚げようと上京し、いろんな職業を転々としていたそうです。
なかなか上手くいかない中、お寺のお坊さんに「風鈴屋さんに行ってみてはどうですか?」という助言を受け、当時花形であった風鈴屋さんで修行を始めました。
初代は又平(またへい)という方なんですが、長男である儀治が継ぎ、受け継いだガラス風鈴を”江戸風鈴”と名付けました。なので、江戸風鈴という名称は儀治のブランド名と思ってください。 その後、私の夫が継ぎ、現在に至ります。 現在は私が代表を務めていて、娘や弟子と共に作り続けています。

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◎職人になったキッカケは?

私は、この家に嫁いだことがキッカケですね。
ものを売る仕事なので、それほど抵抗はなかったのですが、一番驚いたのは仕事の量と時間です。なんでこんなにも働くのか?というのが一番最初に感じました。朝7時から風鈴を膨らますのですが、そのために5時には起きて、窯の蓋を外していました。当時は燃料がコークスだったこともあり、時間がかかりました。8時までひと仕事をし、朝食を取ったあと昼まで仕事。昼食後から夕飯時まで、そしてだいたい9時くらいまで吹いていたと思います。絵付けはもう少し時間かかっていましたね。

◎江戸風鈴の定義・特徴とは?

江戸風鈴の特徴は宙吹きで作られることと、絵付けを内側にすることです。型に入れて吹くことにより同じ寸法のものが作れる手法に対して、宙吹きは型がないため吹く人の感覚のみでやっています。昨今、輸入品が増えていますが、どれも型吹きかつ絵付けがプリントで外側になされています。

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そして、江戸風鈴は切り口がギザギザになっています。これは硝子の管があたって音を出すのに必要なもので、実はつるつるだとなかなか音が出ないんです。叩くと音は出るんですが、弱い風だと滑ってしまったりこすれるだけで音がでない。でも、ギザギザにすることによって、そよ風で触れただけでも音が鳴るようになっています。

◎丸い風鈴が出来るまでの工程を教えて下さい。

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まず、ガラスはソーダガラスを使用しています。クリスタルガラスとは違って、普通のガラスです。ガラス自体を洗い、砕いて、窯の中で溶かしています。
ガラスを吹くのは二人一組でやります。一人が小さい玉、もう一人が風鈴の本体となる部分を吹くようにしています。

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一人が鳴り口となる部分を吹き、もう一人が本体を吹くこの体制のほうが作業効率が良いんです。一人で全工程をやるとなると、とてもじゃないけど生産が追いつかないので。
女性が絵付けをメインで担当しますが、手が余った際にはみんな手伝うようにしています。
工房見学を受け付けているのですが、吹く人が二人いて、ひょうたん型のものを作った後に風鈴が出来上がることを伝えると皆さん驚かれますよ。 そして皆さん思うのが、あれがそのままひょうたん型の風鈴になると思っているんですが、実はまだ鳴り口が付いている状態なんですね。

(江戸風鈴の製作工程についてはこちら「風を音で楽しむ「江戸風鈴」が出来上がるまで」)

◎どうやって絵付けをするんですか?

江戸風鈴の絵付けは特殊で裏から色を付けています。そして柄によって違うため一概には言えないのですが、絵付けの手順としては、作る柄別に膨らました風鈴をわけてから、一色ずつ塗る形になっています。なので、白を塗る工程がある場合は全てに白色をという形です。乾かす工程が必要なので、次の色を塗るまで時間がかかります。

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例えばダルマの風鈴。 これは目の部分である黒を塗ります。黒は墨を使用しているので、乾かすのにそれほど時間を要さないのですが、そのあとの白は油性の顔料なので乾きにくいです。なので、白を塗るとどうしても一日は置いておかないとその次の層が塗れないです。 風鈴制作で一番時間がかかるのは絵付けの工程です。
そしてなにより、絵付けを裏からするのですべて反転した状態で描かないといけないんです。 絵よりも文字が難しいところですが、慣れましたね。

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◎作る柄は決まっているのですか?

昔から受け継がれている柄はもちろん、その時代を映し出すものを作るようにしてます。絵付けをするのが女性がメインということもあり、みんなで何が売れるのか、そして個々でなにが作りたいかなどを話し合いながら決めています。中には狙い通りのものもあれば、実はそこまで売れなかったということもあるので、手にとっていただける皆さんの意見も取り入れつつ新しいものを作っています。
もう30数年前になりますけど、私が嫁いできた頃と絵はだいぶ変わっています。

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半分近くは赤を基調としたものが多かったんです。 そもそも風鈴は「音で魔除けを」という意味が込められており、魔除けとして使用されていた赤色を掛けあわせたものが多かったです。なので、縁起物として親しまれていました。 例えばこちら。これは野菜のカブと千両の小判が描かれているんですが、カブは花札でおいちょかぶというのになると勝つことから、賭け事に勝つという意味で描かれています。江戸時代の洒落を描いていたりするんです。 他には宝船と松が描かれているものもあるんですが、こちらは”宝船を待つ”にかけて描いています。 赤が多かった昔に比べ、現在は見た目が涼し気な金魚やお花などが人気です。 赤がどうしても暑苦しかったりするんですかね。今は赤を基調とした昔から受け継がれている柄は少なくなっています。

◎制作における喜びや難しさ、そして譲れないものはなんですか?

お客様に喜んでいただけるところですね。”こういうのが欲しかった”なんて聞くのは嬉しいし、ものづくりをやっていて良かったと改めて感じます。
辛さは、新しいものを生む難しさですね。 同じものを作っているだけではやっていけないですし、どんな商品が好まれるのかを日々考えています。絵付けと同じでどんな柄が良いのかを考えるのが一番難しいですね。
最近江戸川区では、産学公の連携により新しいものを作っていこうという取り組みがあり、学生を招いてアイデアを出してもらうことがあります。

譲れないものは、音と手作りです。 昨今、輸入品が増えていくなかで、手作りの物だからこそ出せるあたたかみを大事にしてます。そしてなにより江戸風鈴の特徴の一つである鳴り口がギザギザだからこそ出せる音を大切にしています。

◎これからの目標など教えて下さい。

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まず、日本人の生活の中で風鈴を使って欲しいと思っています。
どんどん生活様式も変わっていますし、生産者である私達も変化に付いていかないといけないと思っています。
昔は軒下に風鈴を飾る家が多かったですが、軒下がない家が増えていますので、家の中でも風鈴を楽しめるようにスタンドを作ったりしていて、 セットで購入される方も増えていますね。
なので、人々の生活様式に合うような柄を作ったり、家の中でも楽しめるようにスタンドを開発したり日々研究していきたいです。

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【有限会社 篠原風鈴本舗】
場所:東京都江戸川区南篠崎町4−22−5
Tel:03-3670-2512
Mail:honpo55@nifty.com
HP:http://www.edofurin.com/

風を音で楽しむ「江戸風鈴」が出来上がるまで

2016.02.14

江戸の粋な音色を奏でる江戸風鈴

2016.02.12

篠原風鈴本舗さんでは「見学」と「製作体験」を受け付けています。
詳細は以下をご確認ください。


*見学*
見学は無料です。ガラス吹き(宙吹き)から絵付けまで、見学できます。都合により不可の場合があります。
※日曜・祝日はお休みです。
※祝日は不定休のため、お電話で確認してください。
※繁忙期(7月~9月上旬)は見学はできません。

*製作体験*
体験①絵付け体験
内容 ガラスをふくらます見学
仕事の説明、質疑応答
絵付けの体験
時間 一時間
料金 1個¥1,500円(8%税込)

体験②ガラス吹きからの体験
内容 ガラスをふくらます見学
仕事の説明、質疑応答
一人ずつガラスをふくらませる。(職人の手伝いあり)
ガラスがさめてから、絵付け。
絵付け終了後、鳴らすように糸付け。
完成後箱に入れてお持ち帰り。
時間 60分(10名まで)・75分(30名まで)
料金 1個¥2,000円(8%税込)

ご予約はお電話にて承っております。
1、ご希望の日程・お時間
2、体験の内容(絵付けのみorガラス吹きから)
3、代表の方のお名前とご連絡先・人数
をお伺いいたします。
※日曜・祝日はお休みです。
※祝日は不定休のため、お電話で確認してください。
※繁忙期(7月~9月上旬)は見学はできません。