江戸の粋な音色を奏でる江戸風鈴

風鈴のチリンチリンという音色は、どこか懐かしく、心なしか涼しげな気分にしてくれる夏の風物詩です。
今回は、その音色だけではなく、粋な見た目を持つ「江戸風鈴」をご紹介します。

※写真は有限会社篠原風鈴本舗様にて撮影されたものを使用しています。
※色味は実物と多少異なる場合があります。

◎江戸風鈴とは

江戸風鈴は、東京にて江戸時代から受け継がれる技術で作られるガラス風鈴のことを指し、有限会社篠原風鈴本舗の二代目である篠原儀治さんが名付けました。江戸風鈴とは品目でもありブランドでもあるもので、現在都内では有限会社篠原風鈴本舗と篠原まるよし風鈴の2箇所のみで製造しています。

そしてこの江戸風鈴という名称が付くまでは原料に由来して「ガラス風鈴」や「ビードロ風鈴」などと呼ばれていました。

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◎江戸風鈴の歴史

江戸風鈴は、中国から渡来した風鈴を時代の流れとともに用途や形を変えてきました。
中国では、竹林に下げて風の向きを確認したり、音色で物事の善し悪しを占うために使われていました。
その後、風鐸(ふうたく)として日本に仏教と共に渡来しました。今でもお寺の四隅にかかっており、それらは厄除けとしての効能があるとされていました。

平安、鎌倉時代には縁側に下げることで疫病神が屋敷の中に入るのを防ぐ為に使用されました。1700年代には、ガラス製のものが出始めるようになりました。当時は、原料であるガラスが貴重で値段が高く、とても庶民に広まるものではありませんでした。
昭和に入ると次第にガラス製品が安くなると共に、江戸風鈴も一般市民にも広まるようになりました。 

◎江戸風鈴の種類や絵柄

小丸型

江戸風鈴の基本的な形です。直径約8cm、高さ7cmのものが多く、中には基本サイズより大きいものも製造されています。描かれている柄は夏を感じさせる金魚、花火、紫陽花などに加えて招き猫などといった可愛い柄もあります。

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特選小丸型

小丸型と同じ大きさでありながら、特別な絵の具を使用していたり、色数が多いことから「特選」と付くようになりました。近年は、江戸切子職人とのコラボ商品などもあります。

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螺鈿を使用した絵柄

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江戸風鈴✕江戸切子

ひょうたん型

風鈴と聞くと小丸型をイメージする方が多いと思いますが、直径約8cm、高さ約12cmの珍しいひょうたん型をしています。つるして楽しむのはもちろん、室内において置物としても活用できる型です。

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卓上用スタンド

製造元の一つである有限会社篠原風鈴本舗では、室内に風鈴を飾り楽しむための卓上用スタンドも用意しています。
マンション等に住む方で、風鈴を飾りたいけれどベランダだと落下や近隣住民のことを考えて躊躇してしまっている場合などに最適なものとなっています。

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絵柄

風鈴にはその時代を象徴するモノ・コトが描かれています。
赤く塗られたものは江戸時代から伝わる長い歴史をもつ絵柄であり、かつて魔除の鈴とされていた名残で、魔よけの色である赤を全体に塗っています。

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◎江戸風鈴の特徴

江戸風鈴は、一つ一つ職人の手によって作られていることからすべてサイズが異なります。
小丸型やひょうたん型には目安となるサイズがあるものの、ガラスを膨らます工程が特殊であることから、サイズが異なります。江戸風鈴は、型を利用しない宙吹き(ちゅうぶき)という長い竿を均等に回しながら吹き、空中でガラスを膨らます方法で出来ています。

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また、風鈴の縁にも特徴があります。型を利用した風鈴は縁をガスバーナーなどで焙ることでつるつるに仕上げますが、江戸風鈴はあえて触ると引っかかるようザラザラにしてあります。これは、僅かな風でも縁に触れた時、音がなるよう工夫されているためです。

〜終わりに〜

ガラスを加工して出来上がる江戸風鈴。
今でも一つ一つ職人の手によって作られており、その音色はどこか安らぎをあたえてくれます。
また、絵柄はその時代を表すものから代々受け継がれる伝統的なものまで幅が広く、自分の好みの一品を見つけることが出来ます。
春から夏に向けてお気に入りの柄を見つけて、江戸風鈴で涼んでみませんか?

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