京浜地区の祭り囃子を支える和太鼓職人

和楽器の一つであり、日本の音楽文化を支える「和太鼓」。
国内はもちろん、海外でも親しまれており、近年は和太鼓を活用したプロ演奏者も活躍し、高く評価されています。
そんな和太鼓制作に込める想いを制作者であり、演奏者である畑元太鼓店、代表の畑元 徹(はたもと とおる)さんにお話を伺いました。

和太鼓についての記事はコチラ日本を代表する和楽器「和太鼓」

日本を代表する和楽器「和太鼓」

2015.11.08

◎太鼓を作るようになったきっかけを教えてください

元々地元で祭り囃子をやっていました。その当時から太鼓そのものに興味があり、23歳の時に仕事をどうしようと考えていた時に岡田屋布施さんの求人募集を見つけて、元々興味があり演奏もしていた太鼓を作る道へ入ろうと思いました。
土地柄、みんなお祭り大好きなんですよ。当時、どの地域も今ほどお祭りが盛んではなかったんですが、羽田だけは違って、昔からのお祭りがあり、お囃子が残ってたんです。

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演奏もプロでやっていた時の先生からも是非作ってくれとも言われ、やっぱり演奏するより作ったほうが皆さんに喜んでもらえたのが強くて制作の道を選びました。
また、ちょうど入った時に岡田屋布施さんも職人不足で太鼓作るのやめようかって悩んでいたので、それも一つのきっかけですね。

◎浅草にある岡田屋布施さんで修行はどのような感じだったのですか

こういう工芸品だとかを作る場合は弟子入りすると思うんですが、岡田屋布施さんは特殊だったんですよ。
修行させて頂くんですが、毎月給料が出て、普通に会社に務める感覚と同じでした。大学を出て、その後修行したけど、当時は友達にも「なぜその仕事?」と言われましたが、仕事は太鼓制作や修復に関することなんですが、感覚としてはみんなと変わりませんでしたね。

◎畑元太鼓店は普通の太鼓店と違う?

ここは他の所と比べると小さい店なんです。普通だと太鼓の土台となる胴(どう)などを在庫として持ち、お客さんがその中から気に入ったものを選び、制作が始まるんです。

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ウチはお客さんから注文が入ると胴を買い付けてから制作に入ります。なので、特殊なスタイルではありますね。ほとんどの所は倉庫を持ち、数十個の胴を在庫として持っているので、ウチみたいにこのような小さい工房でやってるのは今でも珍しいはずですよ。

◎太鼓店としては特殊なスタイルを維持する上でのこだわりなどはありますか

こういうスタイルだからこそ「技術」のみで勝負してますね。
太鼓は皮の張り方を始め、少し違うだけで音が違うので、叩くとどんな職人が作ったか分かるんですよ。音だけで、手抜きをしたかどうかの違いもわかるからこそ一つ一つ大事に作ってます。
大田区を始め、京浜地区のお囃子で使われる太鼓はほとんどウチのですよ。

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また、人には出来ないような仕事もやっているのもこだわりです。宮太鼓(みやだいこ)なんかはどこの太鼓店も作っているんですが、締太鼓(しめだいこ)や鼓(つづみ)を作っているところは少なく、あらゆる種類の太鼓を作れるってのも畑元太鼓店の売りです。

◎太鼓はどのような形で納品するのですか

2パターンあります。お客さんが実際に取りに来る場合と、宅急便で送る場合があります。
宅急便の場合、梱包して、普通の荷物を送るように送ります。北海道からの依頼なんかもあるので、その場合は宅急便で送りますが、問題はないですよ。

以前、アメリカ本土、ハワイ、ヨーロッパなど海外へ発送したこともありました。
気圧の問題とかもあまり心配することなく送れます。皮の部分なんかは太鼓のものは厚みがあるので心配いらず。でも、三味線なんかは皮が薄いから海外発送は難しいんではないかな。
胴の部分は、元々くり抜いているのでところどころ割れ目などが入ってしまうんですよ。太鼓自体、割れ目が無いものは珍しくて、割れ目がある場合はそこにネームプレートなどを貼ったりしますね。

◎Taikoとして世界でも注目されていることや、今後の太鼓について教えて下さい

もう日本でのブームは過ぎましたよね。学校などで取り入れている時は太鼓屋さんも忙しかったですけど。
最近は、海外での演奏者からの人気が凄いですね。イタリアやイギリスにプロ演奏者として活動している知人がいるんですが、彼らからの依頼で実際に現地に足を運び、演奏方法や太鼓の作り方を教えました。
ワイン樽などを使って、オリジナルのものを作ってみようって試してましたね。
なので、世界でもっと人気になり、日本人がまた演奏したくなる流れが来ても良いのかなとも思っています。

◎工房を紹介してください

冷蔵庫

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ここの冷蔵庫で張る前の皮を保存してます。一枚が牛一頭分ですね。

仮がけの太鼓

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これは張る皮を仮止めしている状態です。

獅子太鼓制作

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獅子太鼓を作っている最中で、これは本漆を塗って、今乾かしている状態です。

太鼓ばち

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こちらは太鼓用のばちを置いてます。ここに置いてあるものは専門の業者が作ったものをウチで販売代理している形となってます。

制作に欠かせない道具

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これらは制作する上で欠かせない道具たちです。
革を縫う為に必要な針とかは特殊なんですが、これがないと鼓が完成しません。

◎最後にメッセージをお願いします

若い人にもどんどん日本の「良いところ」に接して欲しいな、と思います。
おかげ様でお囃子も若い人が増えましたね。昔と比べると大違い。お祭りも盛んになり、日本の文化に触れたいという人も増えてきて、太鼓店としても嬉しいです。
そして、国際人を目指すのであれば、日本のことを文化面も含めもっと知っておいたほうが良いと強く感じます。

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 – 畑元さんと愛犬の一郎くんのツーショット

日本を代表する和楽器「和太鼓」

2015.11.08
プロフィール

畑元徹
畑元 徹(Toru Hatamoto)
1953年東京・羽田生まれ。
23歳から浅草・岡田屋布施で太鼓製造を修行。
28歳で独立、畑元太鼓店を開店し、現在に至る。

畑元太鼓店

住所:東京都大田区新蒲田2−6−3
Tel:03-3731-2489
HP:http://homepage3.nifty.com/teretukutenten/index.htm

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