東京都内で2軒のみが作る「江戸風鈴」は、他のガラス製品とは違い、宙吹きという特殊な工程を経て出来上がる伝統工芸品です。
機械を利用せず、全工程を人の手で作られるからこそ、使い手目線を重視した唯一無二の芸術品となっています。
今回は、江戸風鈴ブランドを確立した篠原儀治さんが当主をつとめていた有限会社篠原風鈴本舗に受け継がれる江戸風鈴の製作工程をご紹介します。
(江戸風鈴の記事はこちら「江戸の粋な音色を奏でる江戸風鈴」)
江戸風鈴が出来るまで
江戸風鈴はガラスを原料としており、使用するガラスは窓などに使われる普通のものと同じです。
まず、ガラスを炉の中に入れて熱します。炉の中の温度は1,320度前後が目安であり、この炉の中にはガラスを入れる坩堝(るつぼ)が埋め込んであります。
使用される炉は、電気で制御された電気窯を現在は使用していますが、かつてはコークスが主な火力でした。なので、江戸風鈴を作る職人は、朝早く起きて窯を整えることから製作が始まりました。
1)ガラス管の先にタネガラスをつける
炉の中の坩堝からガラスのタネを巻き取ります。サイズは1円玉ほどのものであり、タネを巻き取る棒もガラスで出来ており、ともざおといいます。
2)小さい球を吹く
1円玉ほど巻き取ったタネガラスを吹きます。
このタネガラスは後ほど切り離し、鳴り口になるため、鳴り口のサイズはここで決まります。
3)小さい球の先にさらにタネをつける
膨らませたタネガラスを再度、炉に入れてガラスを巻いていきます。ここで巻き取るタネは風鈴の本体となる部分です。
4)風鈴の本体を吹く
本体となる部分を少し膨らませたら、針金で穴を開けます。
この穴は後ほど、風鈴を下げる際に使用する糸を通します。
穴を開けたあとは一息で風鈴の大きさまで膨らませます。
本体を吹くときは、型を使用せず空中でふくらます方法を取り、これを宙吹き(ちゅうぶき)といいます。江戸風鈴はすべてこの方法で作られています。
5)風鈴本体の切り落とし
風鈴のサイズに膨らませたものをともざおから小石を利用して切り落とします。
6)包丁や小石で小さい球の切り落とし
15分〜20分ほど経つとガラスは冷めて、触れるようになります。
ここで、口玉を切り落とします。
江戸風鈴の特徴は鳴り口がギザギザであることから、この工程で鳴り口を整えることはしません。
7)絵付け
出来上がった風鈴に絵付けをしていきます。
江戸風鈴は、表からではなく裏から絵付けをすることを特徴としており
描くものは歴史的なものから、時代を表すものまで幅広くなっています。
また、裏から絵付けをしていることから左右反転した状態で絵付けをするため完成した状態をイメージしつつ描いていきます。
8)紐通し
最後に風鈴に紐通しをして完成となります。
9)完成
〜終わりに〜
使う窯がコークスから電気窯へ、そして描く柄を伝統柄から現代風へと、その時々のものを取り入れつつ伝統的な製法を守り作られています。今ではその音を楽しむだけではなく、インテリアの一つとして絵柄を楽しむ方も増えています。