文字を「生かす」手彫印章の制作

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伝統的工芸品である山梨県の甲州手彫印章は、すべての工程が手作業によって行われています。彫刻の精密さはもちろん、文字を美しく収めるセンス、生き生きとした線や点を彫る技が制作に不可欠です。

甲州手彫印章の歴史や生産地については、こちらの記事をご覧ください。

今回は、伝統工芸士望月煌雅さんの甲州手彫印章『煌雅印』の制作工程をご紹介します。
☆使用している画像は、『望月煌雅 工房』様で撮影したものです。実際の色とは多少異なっている場合がありますことをご了承ください。

◎校字

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彫刻する文字を字書で調べます。

◎草稿

鉛筆で判子のデザインを紙に書きます。画数が多いと字が小さく見え、少ないと大きく見えるな どといった目の錯覚も考慮し、字の大きさやバランスを考えながらデッサンをします。

判子の用途、使い手の希望、購入の経緯などといった情報がデザインの決定に関わる場合がある ことも。最も時間をかける重要な工程のひとつです。

◎印面調整

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紙やすりで表面を平らにします。ここで平らにしておかないと、正確に押印できない判子になっ てしまいます。

◎字割

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印面に朱を付け、ピンセットで方眼を書きます。

◎字入れ

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筆で文字を書きます。草稿と鏡文字になるように、鏡を見て時折確認しながら字を入れます。墨で 書き、朱で修正を加えます。

◎荒彫り

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枠と文字を残し、それ以外の部分に深さを出すように彫ります。

<主な素材の性質>

象牙:硬く、精密な彫刻を施すことができる。
オノオレカンバ:硬い。繊維質のため硬さにバラツキがある。
柘(つげ):硬く、彫刻がしやすい。

◎印面調整

墨と朱墨で浮き上がった印面を紙やすりで平らにします。

◎墨打ち

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印面に墨を付け、黒くします。

◎仕上げ

仕上げ

枠を均一にし、文字の仕上げをします。
文字の線の一本一本に力が入るように曲がりや太さを調節しなければなりません。線の勢いや流 れを出すことによって、判子の文字が「生きた」ものになると言います。

◎総仕上げ

hanko9 hanko10 押印された判子

押して確認した後、また微調整して完成です。

〜最後に〜

このように細部まで職人が注力して制作された印章は、唯一無二のものとして使い手の人生の折々で活躍し、押印したときの感動を絶えず与えてくれることでしょう。

 

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ABOUTこの記事をかいた人

Rie

東京都在住の文学部生。趣味は映画観賞、読書、絵画。ものの背景にある、歴史や作り手の物語を知るのが好きです。