武士の魂…日本刀の歴史と文化

刀

戦いのための武器でありつつも、艶めかしい美しさの不思議な魅力を持つ日本刀。
数多の人々の心を捉えて離さず、海外や若い女性からも熱狂的な視線を浴びるようになったのはもはや近年に始まったことではありません。

他の国の刀剣と日本刀は何が違うのでしょうか?
また、日本人にとって刀剣はどのような存在だったのでしょうか?

人々と共に歩み、大切にされ、奉られ、ときには畏れられた日本刀の歴史と文化を学ぶとともに、その謎を解いてゆきましょう。

◎単なる戦の道具ではない

「刀は武士の魂」と言われるように、日本刀は武士の持つ忠孝・質素・礼儀・清廉・忍耐の精神の象徴でもあります。この言葉が広まったのは享保二年(1717年代)からで、武士の特権性が強まった時代でした。

それ以前には、武士以外でも脇差に刀剣を差していました。歴史とともに変容していったものの、刀剣は一人前の人間の象徴として戦うときだけでなく平時にももつ習慣は古くから日本に行き渡っていたのです。

◎刀剣の霊力と歴史

日本には「守刀(まもりがたな)」という習慣が古くからありました。平安時代の歴史書には皇子誕生の際に天皇が御剣を贈られたことが記されています。

守刀は新生児を悪霊、物怪などから護るためのものです。刀剣には霊力があると信じられていたため、お守りとしての効果があるとされていました。尚、天皇家では今日でも生まれた子に守刀を贈る儀式が行われています。

◎著名な刀鍛冶たち

こうした日本刀の歴史の背景には、類を見ない高度な技術とセンスを持った刀鍛冶たちの姿があります。ここでは時代を代表する有名な名工と名刀をご紹介します。

<古備前友成(こびぜんともなり)>
一条天皇の時代の人で、友成よりも古い有名作品はそう多くありません。
代表作は御物の鶯丸友成、平宗盛奉納と伝えられる厳島神社の友成や、埼玉川越の喜多院所蔵の太刀です。作風は古風で優雅です。

<庖丁正宗(ほうちょうまさむね)>
鎌倉時代末期に活躍した刀工です。作風は破天荒で工芸の美をはるかに超越しているとも言われています。その凄さは「川のせせらきの煌めき」「天空の星の輝き」など様々な言葉で表現されています。「正宗」は名刀の代名詞として国宝や重要文化財など数多く残っています。

<長曽禰虎徹入道興里(ながぞねこてつにゅうどうおきさと)>
江戸時代の「よく斬れる」「業物である」として名を馳せた刀鍛冶です。正宗が優美さを評価されたのに対し、虎徹は実用の刀として高く評価されています。反りが浅く、刃が薄い特徴があります。

  

参考:
小笠原信夫『日本刀 日本の技と美と魂』

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