「香合」をご存知ですか?
部屋でアロマオイルやお香を焚いて気分転換や香りを楽しむことはとても良く知られていますが、お茶会でも同じような目的でお香が焚かれます。
茶道具といえば頭には御茶碗、盆、茶筒などが思い浮かぶことでしょう。茶道を習っていない者からするといまいち良さがピンとこないことも…。
今回は、そんな茶道具の中でも、多彩で表情豊か、お茶の知識があまりなくとも趣を感じやすい道具「香合」をご紹介します。
◎香合とは
茶道具のひとつで、お茶室で焚くお香を入れるための小さな器のことです。
◎なぜ香を焚くのか
お香には心を安らげ、場の空気を清める効果があると言われています。仏教の儀式でしばしばお香が用いられるのはその理由からです。
◎種類
お香を焚く道具は風炉と炉の2種類があり、時期によって使い分けます。それによって用いられるお香と香合の素材が違います。
・風炉の時期(5月から10月)
香木という良い匂いのする木を薄く削ったものを使います。
香合は漆器や木材のものが用いられます。
(堆朱作「青楓雉香合」磯井作「蒟醤橘花香合」東京国立近代美術館工芸館(以下工芸館)蔵)
・炉の時期(11月から4月)
練香という香木等を粉末状にして練って固めたものを使います。
湿度があり漆器を傷ませるので、香合は陶器や金属製のものが用いられます。
(左から前田作「志野犬香合」荒川作「志野菊香合」荒川作「織部香合」工芸館貯蔵)
◎絵柄や形
絵柄や形には様々なものがあります。好みに合わせてユニークで遊び心があるものや、侘び寂びを感じさせるものもあり収集家の人気を博しています。季節の植物や動物が描かれたデザインの器を時期によって使い分けるのもまた楽しみとされています。
例えば、
植物:蘭、菊、牡丹、松、桜
動物:犬、蛍、トンボ、蝶、鯉、鳥
その他:ひょうたん、船、羽子板、隈取り などがあります。
〜最後に〜
(加納作「蘭図香合」工芸館蔵)
香合はデザイン性の高さから、茶道具としてだけでなくインテリアや小物入れとして部屋に置くことも可能です。「かわいい」とされるもののひとつに「小さいもの」がしばしば挙げられますが、まさにそういった感情を抱かせる和小物といえるでしょう。手のひら程度の小ささながらも、細かく施されている凝った細工や工夫とそれぞれの作品にある個性や面白味が見る者の心を魅了します。
画像:
東京国立近代美術館工芸館
鎌倉彫 上村一渓
フォローしていただくと、更新情報を受け取ることができます。