女性ならではのやさしさとぬくもりを感じられる作品作りを心がける鍛金作家ー宮田琴ー(後編)

宮田 琴(Koto Miyata)
鍛金作家
鍛金という伝統技法を用いて、オブジェからアクセサリーまで制作している。
2004年 東京藝術大学大学院 修士課程工芸専攻(鍛金) 大学院 修了/2005年 東京藝術大学大学院 鍛金研究室 研究生修了/2006年 東京藝術大学大学院  美術教育 研究生 修了

下町の荒川区にて鍛金作品を作る女性作家、宮田琴さんにお話を伺いました。後編では、職人&作家としての活動について、そして制作を続ける上で宮田さんが大切にしていることをお届けします。

前編はこちら

女性ならではのやさしさとぬくもりを感じられる作品作りを心がける鍛金作家ー宮田琴ー(前編)


職人と作家、2つの顔を持ちつつ

ー今、宮田さんは、自分の作品を作りつつ、商品を作っているという事ですが、割合的にはどうですか?

宮田 そうですね、2本立てでやっていて、半々ですね。
大きい作品を作ってると時間が掛かっちゃうので、それに費やしていると商品がおろそかになっちゃいますね。
商品は小さめなのでそんなにたくさん作らなくても短期間でちょっと作れたりします。

ー商品はどのようなものを?

宮田 ぐい呑みやスプーンとかお皿とかですね。
江東区伝統工芸会でやる企画やデパートさんの展示会で販売しています。
前に一度、ネットもやったのですが、「鍛金」というものの認識があまりまだないので、ネットでは厳しかったです。
あと、子供がいるので、なかなか表に出る事が難しいので。

イベント毎に作って発表していく。
今はスローペースになっていますが、少しずつ新しいアイテムも増やしています。
作品の方は、最近はフクロウが多く、ここ(特定の場所)に置きたいんだけどってゆうオーダーを受けます。そして、大きさや顔つきやニュアンスなどを現場に合わせてご依頼いただく事が多いですね。

ーぐい呑やスプーン以外はどのようなものを?アクセサリー類ですかね?

宮田 アクセサリーもやってます。銀のネックレスですね。

出展:宮田さんHPのスクリーンショット

ー綺麗ですね。これどうやって色付けしているんですか。

宮田 これは、箔です。金箔、銀箔色箔って日本画の画材の箔ですね。
色がついているんですけれど、凄いいろんな色があって、それを細かく砕いて定着させて、剥がれないようにコーティングします。

ー花瓶とかも作っているんですね。

宮田 そうですね、なんでも。
最近、本当なんでも作っていて。

ハートをモチーフにした作品を

ー小物を商品にして販売してみましょうってなった場合は、どういったものを作るんですか。

宮田 どのアイテムってゆうよりかは全体のモチーフとしてハートをテーマにしています。
これもハートの形ですし、こちらも。
先ほど、叩いていたのもハートのお皿になるんですね。
小物のアイテムではハートを意識してやっていこうかなってゆう感じです。

ハートのお皿になる前の状態

いまハートをモチーフにしているのも、お抹茶関係のお話を頂いたときがキッカケです。茶道の「おもてなしの心」や、人との繋がりに心を込めて伝えるってゆうのが日本的だと感じて、ハート「心」をモチーフにするといいかなってゆうふうに思ったんです。
鍛金ってゆうといわゆる渋いぐい呑みや急須のイメージがあると思うので、そのイメージを変えて、私女性だからこそやれる可愛い感じにしたかったんです。

ーなかなか男性作家は出せない部分ではありますもんね。

新しい取り組みも惜しまず

ーハートをモチーフにしつつ様々な作品作りをされていますが、最近はどのような創作活動をされているのでしょうか?

宮田 最近やっているのが、升です。
升をプランター代わりにして、周りのフレームを金工でちょっと作ってます。
今、多肉植物ってすごく流行りじゃないですか。
それの器を升でやってもいいかなって。
その枠な世界観を作りたかったんですね。

ーこれはいいですね。

宮田 いろいろと展開できるアイテムなので。

ーこの富士山の部分をハートにしたりとか、色々なバリエーション作れるってゆうことですもんね。

宮田 はい、動物なども出来ますしね。

ー幅広く作ることが出来ますね!
こうやって升などを応用する作品作りをされていますが、その中で、作家としてのこだわりってなんですか。

宮田 作り手の愛情を伝えることですね。既製品じゃない1点ものになるので、気持ちが伝わるものがいいなと。なので、完璧にきちっとしたものというよりかは遊び心や個性があるもの、私らしい女性らしさというのを大事にしています。

 

日々の生活からアイデアを

ー宮田さんがこのような作品を作る中で、それらのインスピレーションはどこから来ているのですか。

宮田 それは意外と日常の生活の中で思いつくんですよね。
博物館や美術館に行ってみようとか、そういうのではなく。

例えば、こうゆうのがあるとか企画展があるとかって何ヶ月か前に分かっていると、頭の中のどっかにあって、なんかの時にその引き出しがパッと開いてこれいいかもみたいな。
なんか、道を歩いている時だったり、電車に乗っている時だったりとかですね。

ー逆に他の作家さん達をチェックしたりしているんですか。

宮田 そうですね、今はフェイスブックがあるんで、告知していたのを見に行ってみたりですね。

ー実際に足を運んでもいるのですね。

冷たく見える作品に温もりを

ー宮田さんにとって譲れないこだわりって何ですか。

宮田 譲れないこだわりは、手作業です。
商品として数を作らなきゃいけないってこともあるの、ある程度どっかを機械にたよったとしても、それは手作業の器の下地であって、時間をかけて1つ1つ手作業で作っていきます。
ぬくもりですよね。手作業=ぬくもりですね。
金属って冷たいイメージがあるんですけれど、それらを叩いて自分らしさの表現をする事で、金属がぬくもりに変わって作家の気持ちが相手に伝わってくれたらとおもっています。そんな流れを大事にこだわっています。

ー作品を通して温かくっていいですね。
最後に、今後鍛金作家がいなくならないようにする為に出来る事、したい事や考えている事って何かありますか。

宮田 発表し続けることだと思います。
どうしても、鍛金を続けている人って少ないんですよ。
鍛金の研究生って同級生で6人いるんですけれど、その中で今もやっているのって私ともう1人かな。

多くの人に知ってもらうことから

宮田 あとは、今、若い子たちに職人ってこうゆう事できるんだよとか、私はこんなことしてるんだよってゆうのも、なるべく伝えています。
高校で美術を教えているんですけれど、若い人たちに伝えていくことも大事かなと。それと、特に今オリンピックとかもあるしモノづくりに推されているんで今はチャンスかなと思いますね。
売り込んでいきたい時期ではあります。

ー最後にこのメディアの読者への作家目線でのメッセージをいただけたらなと思います。

宮田 琴
今は、モノが溢れている時代で、安ければ100円でいっぱい色々なものが買える、100円で色々なモノが作れる時代ですけれど、あえて自分だけのモノだとか技術を持った人が1つ1つ心を込めて作っているものに注目する、もしくは体験する事でモノの価値って色々あるんだよってゆうのを知ってもらいたい。安いものがある中で、なぜ高いのか、それはなぜ大事にするのか、大事にすべきものはなんなのか、そのような価値を多くの人には知ってもらいたいです。ぜひ機会があれば体験をしてもらいたいです。

ーありがとうございます。
本日はありがとうございました。

宮田 こちらこそ、ありがとうございました。

作業風景

宮田さんの作品(一部)

【取材:戸田 秀成
【写真:金子 燎之介