友禅染めの技法と工程

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~手描き友禅とは~

日本の代表的な染め工芸のひとつを「友禅染め」といいます。一説には、江戸時代に法師友禅が扇に描いた染めが広まったのがはじまりだとか。糊を使うことが特徴で、染料のにじみを防いで動植物や風景を華やかに描くことができます。

「手描き友禅」とは、生地を塗料に浸さず、一枚一枚職人の手によって模様を描き出した染めのことです。大きく分けると種類は2つ。直接描いてゆく「本友禅」と、模様の掘られた型を使って染めてゆく「型染め」です。

最近では、インクジェットによって友禅の柄をプリントしたものも「友禅」と呼ばれることがあります。この場合、一枚ずつ手作業で仕上げる物とは違い、大量生産が可能です。

また、地域によってこんな特徴があります。
・京友禅(京都):華麗な図案風模様で豪華な金銀箔や刺繍。公家の姫や大名の奥方好み。
・加賀友禅(石川):落ち着きのある写実的な草花模様を中心とした絵画調の柄。武家好み。
・東京手描友禅(東京):渋い色合いだが、都会のセンスと洒落感の漂う作風。町民好み。

~友禅の種類~

ここでは、東京手描き友禅の代表的な染め方と模様の7点をご紹介します。着物など友禅の作品を見る際の参考にどうぞ!

☆使用している画像は、東京手描友禅工房の 『協美』様と、『染の高孝』様(以下協美、高孝)で撮影したものです。カメラで撮られたものですので、実際の色とは多少異なっていることをご了承ください。

引き染め

刷毛を使って手作業で一色に染めてゆくことを「引き染め」と言います。一反(14m)に色をムラなく均一に染めるのには相当な技術と経験が必要です。わざと濃淡をつけてグラデーションにするといった技法もあります。生地に地の色を付けるとき用いられます。

本友禅

図案を参考に絵を描いてゆく染めで、分業でない限り、染め師オリジナルの絵を差すことが可能です。白生地に下絵を描き、模様の輪郭に沿って糸のように細く糊を置き(これを、のり糸目と言います)、染料が染み出さないようにしてから、筆や刷毛で色をつけます。糸目の外郭によって鮮やかな色模様がくっきりと浮かびます。

着る人の年齢や体型、用途、時期、場所を考慮した図案の作成からはじまり、下絵、糸目糊置、地入、そして友禅挿し、引き染め、蒸し、流しなど20近い工程を経て仕上がります。

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画像左:のり糸目、右:完成品 (協美

描き上げ友禅

のり糸目を使わずに、生地に直接筆で描いてゆくものです。

画像のような縞模様を描く場合、線に強弱がつかないように筆の先端を使って慎重に描きます。とても正確で、手作業で描いたとは思えないほどですが、線の一本ずつに込められた匠の技と温もりが感じられます。

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画像左:製作風景、右:完成品 (高孝

型友禅、型染め

数種類の型紙を用いて、綿密で異国情緒のある更紗模様(主に植物や幾何学模様)を描き出す染め方です。型紙は染め師が自作する場合と、専門の彫り師が作る場合があります。精密に合わされた型の柄が伸び縮みによって狂わないよう、水に入れて慎重に保管しなければなりません。

「星」という名の生地に記された針の穴ほどの目印を見て配置し、丸刷毛で均等に塗料を染み込ませてゆきます。根気作業です。模様によっては、一作品で30枚もの型を使うこともあります。枚数を重ねてゆくほど、より細かい柄になります。

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画像上:製作風景、下:模様例 (高孝

墨流し

水を張った水槽に、塗料を浮かべて模様を描き、布ですくい取って染めます。西洋ではマーブリングと呼ばれ、聞いたことのある方も多いのではないでしょうか。もともとは墨を浮かべて白黒のシンプルな模様を描くのみだったので、日本では墨流しと呼ばれます。現在では何種類もの色で鮮やかな柄が作ることが可能になりました。

描き方は様々で、リズムよく水面を動かしたり、筆先を水面に浸けたり、息を吹きつけたりとても自由です。「7割は意図的で、3割は偶然に」と言われるほどで、完成した作品には意外性や驚きといった面白みが見られます。

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画像:製作風景 (高孝

一珍染め

小麦粉を混ぜた糊を使うとても珍しい染めです。糊によって模様を描き、その後に色を入れてから水で洗い流すと、糊を置いたところだけが白く残ります。これを防染といいます。
一珍糊はひび割れが出来やすいので、本友禅の糸目としてはめったに用いられません。しかし、そのひびに染料が染み込んでできる模様もまた独特で味わい深いものとして楽しめます。

画像のように型染めで行う場合、一定のスピードと量を保ち、尚且つ糊が硬くなる前に手早く済まさなければいけないので、骨の折れる作業です。こちらは一珍糊に群青(洗うと糊と共に落ちる)を混ぜ、防染したところが目で分かるようにしています。この後、引き染めをすると模様が白く浮かび上がります。

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画像:製作風景 (高孝

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画像:ひび割れ例 (高孝

ろうけつ友禅

水に溶かした蝋を筆で塗り、防染する友禅です。染色した後に落とすと、蝋で描いた模様が白く浮かび上がります。細かい柄を描いたり、ひび割れを作ったり、散らして粉雪のような模様を描いたりすることもでき、染め師の世界観を独創的に表すことができます。

〜最後に〜

実際のところ、友禅にはここでは挙げきれないほど豊富な種類があります。というのも、複数の染め方を組み合わせたり、引き継がれてきた独自の技を使ったりするため、職人によって表現方法が無限大だからです。また、長年培った経験と偶然が重なり、奇跡的な力作が生み出されることもあるといいます。

以上にご紹介した7つの技法で友禅の大枠を知り、これから着物や染物をご覧になったとき、「これはこんな風に染めてるのかな?」なんて考えながら楽しんで貰えたら何よりも幸いです!

 

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ABOUTこの記事をかいた人

Rie

東京都在住の文学部生。趣味は映画観賞、読書、絵画。ものの背景にある、歴史や作り手の物語を知るのが好きです。