夏は日除け、冬は防寒対策として活用する簾。
東京では、都認定されている江戸すだれ職人は2人しかいません。
今回はその中のお一人で、東京都台東区で明治初期に開業し、株式会社田中製簾所の5代目代表を務める田中耕太朗さんにお話を伺いました。
簾(すだれ)についての記事はコチラ⇒実は貴族のものだった!?―すだれの魅力―
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職人プロフィール
田中耕太朗(Kotaro Tanaka)/ 江戸すだれ職人 株式会社田中製簾所代表取締役。 1963年生まれ。東京都台東区出身。明治初期から続く田中製簾所代表。東京簾工業共同組合理事長。 東京都伝統工芸士、東京都優秀技能者に認定されている。
◎実は実家を継ぐ気はなかった
戸田秀成(以下、戸田) まず、田中さんの簡単な経歴を教えて下さい。
田中耕太朗(以下、田中) 1963年生まれの52歳。現在はここの代表を務めています。最初は、学校行きながら実家の手伝いをすることから始まりました。そして大学生活のなかでいわゆる就職活動という時期が来た時に改めて実家の仕事について考えたんです。その時に朝から晩まで休みなく働いていて、なおかつあまり儲からない。そんな仕事はちょっと嫌だなって思いました。でも、同時に勤め人も嫌だなというわがままな自分がいましたね。なので就職活動もしなかったんです。
戸田 大学卒業後直ぐに実家を継いだわけではないのですね。では、卒業後なにをされていたんですか?
田中 大学の研究室に残っていました。一時期学校の事務系の仕事に就けるという話しがあったんですが、その話がなくなってしまって、どうしようかと迷っている時に教授から声がかかって研究室に残るようになりました。スタッフであり、助手であるようなかたちでして、4年間大学に残りました。大学は数学科を卒業して、内容は嫌いではなかったので楽しかったですね。その後に職人になりました。職人としては今年で26年です。
戸田 数学科で学んだことで今にいきていることはありますか?
田中 良く聞かれるんですけど、いきています。仕事をする上で考える事が多いので、理論を追求したり、正解を求めることなどです。
![sudare-koubou](http://mikoshistorys.com/wp-content/uploads/2015/11/sudare-koubou.jpg)
戸田 実家に戻ってからについて教えて下さい。
田中 実家もどってきてからは、日中は父やウチの職人がやっていることを手伝ったりして、早く追いつくために余った材料などを使って夜な夜な練習していました。そして3年ほどやった時に父に帳簿をはじめ、全てを任せると言われたんです。いろいろ戸惑うことも有りましたけど、改めて親の凄さを知りましたね。自分でモノを作って、帳簿もやり、家族を養うって大変なんだなと。でも、ピンチになると燃えるタイプなので俄然やる気になりましたね(笑)。
◎どんな人間が作っているのかを知ってほしい
戸田 ところで、SNS等でのネット配信もしていますよね?
田中 そうですね。ネットに出ないと人の目にどんどん触れなくなってきていますからね。自分の日頃の仕事や仲間の紹介やイベント情報の告知をしたり、簾が出来るまでの動画を自分で作って動画投稿サイトにあげたりしてます。結局そこもものづくりかなと思っています。田中製簾所のHPも自分で作りましたし、そこは誰かに任せたくないんですよね。
戸田 製作とそういったことをどうやって分けているんですか?
田中 職人って仕事とプライベートを分けられないと思うんですよ。私の父もそうだし、自分もそう。モノを作っていようが、遊んでいようが頭のどこかでは仕事のことがある。職人って結局そうしないと生きていけないのかなと思ってます。そしてやっぱりどんな人間が作っているのかを知ってほしい。それが一番です。
戸田 モノより人ですか。
田中 世の中がどんどん変わっていくなかでどうやってこの仕事を続けていこうかと考えた時、お客様が簾が欲しいってなった時に、私が作ったモノを使いたい、田中製簾所に修理を依頼したいってお客様を増やさないと厳しいのではないかなと思っています。
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田中 また、妥協は許さないですね。例えばこの巻きす。これ、竹を割る前の順番を守って編んでるんですよ。割った後に分からなくならないように目印をつけています。竹って全部真っ直ぐじゃないんですよ。割り箸割った時に、変な割れ方したことありません?
戸田 あります!
田中 あれも竹が真っ直ぐじゃないから。曲がっている部分もあるんですよ。繊維自体が曲がっているので、その繊維に合わせて割るので曲がったものがあるんです。なので、曲がったものをバラバラに編んでしまうより竹の元の形の順番で編むようにしてます。見た目もそのほうが美しいですしね。
![makisu-02](http://mikoshistorys.com/wp-content/uploads/2015/11/makisu-02.jpg)
◎作るのはオーダーメイドのみ
戸田 田中さんの簾はどちらで購入できるんですか?
田中 ウチの商品は卸していなくて、自分でしか売らないようにしてます。一部、特別に企画などで一定数通販で取り扱ってもらうときもあるんですが、基本は注文が入ってから作るようにしています。作れるだけ作って、出来上がった製品を売り込むのはものづくりじゃないなと感じているので、このスタイルは崩すつもりはないですね。
![sudare-work](http://mikoshistorys.com/wp-content/uploads/2015/11/sudare-work.jpg)
戸田 製作を続ける上での原動力はなんですか?
田中 やっぱり、お客様の期待に応えることが一番です。まずはお客様のニーズに応え、そして望む商品を作る。これにつきます。お客様によって予算や用途が違ったりしますのでお客様が望むモノを聞き、作ることを心がけています。
◎新しいことへの取り組みは惜しまない。そして求められる職人へ
![katanuki-sudare](http://mikoshistorys.com/wp-content/uploads/2015/11/katanuki-sudare.jpg)
戸田 田中さんは積極的にイベントなどに出ていますよね。出来るだけ多くの催事に出展するというのを心がけているんですか?
田中 声がかかることもありますし、自分から参加を申し込むのもあります。イベントや催事は、やっぱり自分の仕事を知ってもらえる機会であり、製品を押し売りする機会ではないと私は考えているので、最近は販売を目的とする催事はあまり出展していませんね。職人それぞれが想いがあって参加すると思うんですが、私はまずは何を、どうやって作っているのか、そしてどんな製品が出来上がるかを知った上で買って欲しいと思うので。そして特に簾は、全て寸法や素材が違ったりするのでなかなかその場で売ることって出来ないんですよね。
戸田 最後に、江戸すだれを今後どのようにしていきたいですか?
田中 ものづくりは、「もっと良くできないの?」とお客様に言われてこそものづくりだと思います。なので、そういう要望も含め、お客様が望むものを作り続けていきたいです。お客様が求める商品やすだれの新しい使い方を実現するのが私の役目かなと思っています。
(終)
〜最後に〜
㈱田中製簾所の田中耕太朗さんは、職人らしさのこだわり、目的を持った上で製作を続ける職人です。5代目だから出来ること、そして次の世代へ繋げたいという想いを確認できました。
そして、台東区にある工房の2階はすだれを活用したショールームになっています。
![sudare-showroom-01](http://mikoshistorys.com/wp-content/uploads/2015/11/sudare-showroom-01.jpg)
そこには今までの簾の概念を超えた商品はもちろん、同じ台東区で職人として製作を続ける仲間の商品と共に展示してありました。
興味のある方は、一度訪れてみてはいかがでしょうか?
(簾を応用したランチョンマットやコースター)
![koubou-profile](http://mikoshistorys.com/wp-content/uploads/2015/11/koubou-profile-150x150.jpg)
株式会社田中製簾所
住所:〒111-0031 東京都台東区千束1-18-6
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