はじめての花札

花札は、日本人の自然への愛が込められた美しい絵札です。
江戸時代中期に生まれ、もともとは「花鳥合わせカルタ」と呼ばれて階級の女性の間で流行した雅な遊びのひとつでした。賭博として知られるようになったのは明治期になってからで、もともとそのために作られた訳ではありません。

「花鳥合わせ」「花札」と言っても、絵柄は花鳥だけでなく、草木や月、雨、動物といった季節の代表も含まれており、描かれているのが何なのかを知るだけでも趣深いと感じられます。俳句や着物と同じく、日本人の花鳥風月への情緒の豊かさが色濃く反映された文化なのは間違いありません。

花札の構成

  花札1 1月 松(まつ) 松に鶴
2月 梅(うめ) 梅にウグイス
3月 桜(さくら) 桜に幕
4月 藤(ふじ) 藤にホトトギス
5月 菖蒲(あやめ) 菖蒲に八つ橋
6月 牡丹(ぼたん) 牡丹に蝶
7月 萩(はぎ) 萩にイノシシ
8月 芒(すすき) 芒に月・雁
9月 菊(きく) 菊に杯
10月 紅葉(もみじ) 紅葉に鹿
11月 柳(やなぎ) 小野道風にカエル・柳にツバメ
12月 桐(きり) 桐に鳳凰

ひと月に4枚ずつ、合計48枚で構成されています。

遊び方の基本

ここでは、2人で遊ぶとして、最も基本となるルールだけを紹介します。これさえ知っていれば、応用してどんなやり方にも対応できるので是非覚えましょう。
まず、裏返しにした札を引き、早い月のものを引いた方が先手となります。

花札2

①花札を8枚ずつ配り、手札とする(相手に見せない)
②8枚を場(二人の間)に、表向きにして並べる
③残りを山札(場に積んだ札)として裏向きにして積んでおく

順番になると一枚ずつ手札を場に出さなければなりません。そのときに、もし同じ月の札(=合い札)が場にあれば、取って自分の前に取り札として並べることができます。

④場を見て、手札の合い札を取って表向きにして自分の前に並べる なければ、手札を一枚場に置く
⑤山札を一枚引き、場に合い札があれば、同様に取り札として自分の前に並べる なければ、場に置く

これを手札が無くなるまで続け、最後に取り札の点数を計算したとき点が多い方が勝ちとなります。役や強い札を持っているだけ点数が高くなります。

各月4枚の札には強弱があり、最も点数が高いものが下の画像にある五光の札(20点/枚)です。次に点数が高いのが五光以外で動物や植物、物体の描かれたタネ札(10点/枚)です。その次に短冊(5点/枚)、何も描かれてないものはカス札と言います。   花札3左上:五光、右:上から赤短、青短、下:猪鹿蝶   花札4上:二月の月札、左下:タネ札(5枚で一役)、右下:カス札(10枚で一役)   花札5左:短冊(5枚で一役) 右:花・月見酒、月札(同じ月4枚)

ここで、上記の役の一般的な点数をご紹介します。

10点・・・五光
8点・・・・四光
5点・・・・三光、月見酒、花見酒、猪鹿蝶、青短、赤短
1点・・・・タネ札5枚、短冊札5枚、カス札10枚

ただし、役の種類や点数に関しては従うルールによって違った解釈があるので、あらかじめゲームを始める前に確認するのが良いでしょう。

一昔前までは人気の遊びだったため、札の絵やルールは地域によって異なるものが存在していました。例えば、現在全国で使われている花札は「八八花(はちはちはな)」というものですが、北海道では「北海花(ほっかいはな)」、山形の「山形花(やまがたはな)」、岡山の「備前花(びぜんはな)」などなど「地方花」といって多様な図像が各地にありました。それと同様にそれぞれのローカルルールがあるので、もし花札を知っている人がいれば、聞いてみると地方独自のものを発見できて面白いと思います。

見ても、遊んでも、歴史を知っても楽しいのが花札です。年末年始を家族と過ごすのなら、一家団欒コタツを囲んで遊んでみるのも良いかもしれません。トランプや他のカードゲームとはまた違って、会話と笑顔に花が咲くのではないでしょうか。

 

参考:江橋崇著『花札』

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