塩に隠されたパワー

 

塩1

塩は料理に欠かせない調味料の一つだ。
使い方を見れば、腕前がある程度測れるだろう。

しかし、その塩を家の玄関に置いたり、あるいは人に向かって
撒いたりしたことがないだろうか?

一体何なのか。

今回は日本に伝わる塩に関する2つの風習と、それに潜むある概念についてご紹介する。

◎盛り塩

家の玄関や飲食店の入り口に、小皿に盛られた塩を目にすることがある。それがいわゆる『盛り塩』と言われるものである。
この風習は、奈良・平安時代にはすでに存在しており、良い人を招く効果や、厄除けの意味を持つとされている。
特に飲食店においては、客寄せの縁起担ぎとして広く知られている。

しかし、どれほど縁起の良いことであっても、やり方を間違えてはかえって逆効果になってしまう。正しい形を知っておこう。

用意するもの

・塩(10〜15g程、粗塩を使用すると盛りやすくなる)
・小皿(半紙でも可)
・霧吹き
・紙

手順

①塩を小皿に取り分け、霧吹きなどで軽く湿らせ、混ぜる。

 

塩2

 

②紙で作った型に塩を入れ、小皿や半紙に盛り、円錐状にする。

 

塩3

 

 

③清めたい場所に置く。(玄関などであれば、両サイドに置くことが望ましい)

塩4

 

そして、ここが注意しなければならないところだが、盛り塩の効果は永遠に続くわけではない。

交換の頻度

・月に一度か二度
・毎月1日、15日(神道における神様の日)
※色が変わったり、固まった時は、すぐに新しい塩に交換すること。

処分方法

使用した塩は、台所のシンクなどに流す。ゴミ箱などに捨て、家の中にあるままでは良くないとされているためだ。
しっかりとお礼の気持ちを持って処分しよう。

◎清めの塩

日本では、葬儀の後などに、塩を使って身を清めることがある。家に入る前に身体に振って、不幸を持ち込まないようにするのだ。これが『清めの塩』である。

古来、人が亡くなるということは災厄の一つで、「災い」や「穢れ(けがれ)」という言葉で表現されていた。これは日本神道に根源を持つ土着信仰である。そして、それらから逃れる方法として考えられたのが清めの塩であった。

もともと塩には殺菌・洗浄効果があり、その作用に注目して始まったものと考えられている。
相撲においては、取組み前に塩を土俵に撒くが、これは場所を清め、力士が怪我をしないことを祈ると共に、擦り傷などの殺菌効果も兼ねている。
また、家に来た嫌な客が帰った後に、二度と家に来ないようにと玄関に塩を撒くこともある。

穢れ

上述の「死=穢れ」を前提とした考え方は「汚れ」として、汚いものにまつわる非合理的な差別であると理解されてしまうことがある。

しかし、これは自分が経験したことのない不安定な状況に直面した時に感じる、畏怖の念のひとつの言い替えだといえる。
「穢れ」は自己と未知との「境界線」だったのだ。

 

 

このように、日本人は身体的に清潔である以上に、霊的(精神的)な清らかさを保つために、日常生活の中でお清めを実践してきた。

しかし、何故ただの塩が効くのか疑問に思わないだろうか?
これらは単なる習慣の一つに過ぎないが、本当に大切なのは効果を願い、信じる心があるか否かなのだ。

あなたの目には、塩がどう映るだろう。

 

塩5

 

参考:
人それぞれの葬儀のかたち
盛り塩navi

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