救世主カイロ

夏には冷房のききすぎた部屋で重宝され、冬には凍える寒さから私達を救ってくれるカイロ。
懐(ふところ)の中の炉という意味で、漢字では「懐炉」と書く。
カイロの変遷をたどれば、当時の人々の知恵を垣間見ることができる。

起源は江戸時代に使われていた温石(おんじゃく)である。これは、火鉢などで加熱した石を冷まして懐に入れるものだ。昔は囲炉裏で暖を取ったりと、生活で火を直接使うことが多かったために生まれたのだろう。

明治時代に入ると、麻殻(あさがら)と炭の粉を混ぜたものを、密閉された金属の容器内で燃やすカイロ灰というものが登場する。これは、カメラレンズの結露防止用に使われており、現在も販売されている。

大正時代には白金触媒式カイロが流行した。白金の触媒作用を利用して気化したベンジンを酸化発熱させる化学反応を用いたカイロである。
オイルライターのような仕組みであるため、ベンジンを補給すれば何度でも使うことができ、そのうえ暖かさが使い捨てカイロの13倍と言われている。スチームパンクを思わせるデザインも愛されている理由の一つだ。

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(写真はハクキンカイロ)

さあ、いよいよ昭和時代になると使い捨てカイロの登場だ。
鉄がさびるときに出る熱を利用したものが、この使い捨てカイロ。
サビは、鉄が酸素と反応して酸化鉄になる化学反応が原因。通常、長時間をかけてゆっくりと反応するため熱は感じられないが、これを短時間で行うことで高い温度の熱を発生させる。
カイロの中には、鉄粉・水・塩類・活性炭・保水剤が入っており、水・塩類・活性炭が鉄粉と酸素の反応を促進させて、暖かくさせているのだ。
暖かくなってから放置しておくと温度が下がり、また上げるために揉むことがあるが、正しくは振るのだそうだ。改良されてきており、振っただけで十分暖かくなることと、揉むと袋が破けてしまうことがあるからだ。
使用方法が袋から出して振るだけと、過去のものと比べると全く手間がかからないため、忙しい現代人にはピッタリなのだ。

科学の発達により進化し続け、私達のライフスタイルの変化にも対応してきたカイロ。
次世代のそれは、使い捨てでなく、温度調節がきき、そしてよりコンパクトになっているのかもしれない。

 

参考:
日本カイロ工業会
懐炉

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