日本を代表する和楽器「和太鼓」

日本には多くの和楽器があります。
三曲演奏の際に用いられる三味線箏(そう)または尺八、お囃子などで使用される篠笛、雅楽で使用される雅楽器などと多くの場面で和楽器が活躍しています。
その中でもひときわ目立ち、存在感があるのが「和太鼓」です。

和太鼓

和太鼓は、各種儀式で使用されており、今や海外でも「Taiko」として人気がある和楽器の一つです。
今回は、職人の畑元徹さんが作る作品と共に、日本の楽器界を牽引してきた「和太鼓」をご紹介します。

 畑元徹さんの記事はコチラ京浜地区の祭り囃子を支える和太鼓職人

◎和太鼓のはじまり

和太鼓の歴史は縄文時代(紀元前1万年〜紀元前300年)まで遡ります。
当時の日本に音楽を紹介したのはアジア大陸から渡ってきた人たちと言われており、今の形とは少し違えど、太鼓と認識出来るものが縄文時代に作られた古墳などの遺跡から発掘されています。この中でも、土器で出来たとみうけられる太鼓を持った埴輪(はにわ)の発掘は、当時から儀式や儀礼において太鼓が使われていたことを示しています。

中世頃から田楽などの発達により、お祭りはもちろん、お囃子太鼓などが盛んになりました。戦国時代には、自軍を率いる為にも使用され、今でも時代劇等でそのような場面を見ることが出来ます。

taiko-awaodori※2015年度高円寺阿波踊りにて撮影

今日では、盆踊りや阿波踊りで使用され、神々との意思伝達手段として寺社に置かれたりしています。また、歌舞伎や雅楽でも活躍しています。

◎和太鼓の種類

長胴太鼓(ながどうだいこ)/宮太鼓(みやだいこ)

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多くの方が想像するのがこの長胴太鼓です。宮太鼓とも言われ、神社仏閣で使用されることがメインであり、多くの太鼓団体はこの太鼓を使用し演奏しています。
胴となる部分の材料は欅(けやき)が最も好まれる中、花梨(かりん)・タモ・松・桜等も使用されます。最近では硬質ウレタンで作られた合成欅を使用するケースも多くなっています。

締太鼓(しめだいこ)

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締太鼓は、お囃子や獅子舞などの際に伴奏などで目にすることが多い太鼓です。
多くは、くりぬいた胴に金属のリングで張った皮をボルトや縄で締めあげた太鼓となっています。
胴の素材は長胴太鼓同様に欅が好まれ、皮の部分は牛皮が一般的となっています。締太鼓の特徴は大きさではなく皮の厚みであり、つまり、リングの太さで変わってきます。
締太鼓の大きさを表すときには「◯丁掛(ちょうがけ)」を使います。一番薄いのが並附(なみつけ)、その後は二丁掛・三丁掛・四丁掛・五丁掛とリングの部分が厚くなっていきます。

shimedaiko

桶胴太鼓(おけどうだいこ)

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多くが東北地方で使われるものであり、見た目は締太鼓同様に、胴に皮を張り、縄で締めあげた太鼓となっています。
違うところは、胴がくりぬきではなく、細長い木の板を張り合わせたもので、桶のようになっています。このことから「桶胴太鼓」という名前がついています。
種類は「ねぷた用桶胴太鼓」「南部用桶胴太鼓」「大締太鼓」などその多くが肩からかけて担げるような形になっています。

平太鼓(ひらだいこ)

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平太鼓の最大の特徴は、胴の短さと音質です。長胴太鼓のような長い余韻が残らず、低音気味な音質となっています。今は、阿波踊りやお囃子でも使用されます。

鼓(つづみ)

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砂時計型で、中央のくびれた胴の両端に皮を張り、他の太鼓とは違い、手で打ち鳴らす太鼓です。
小鼓と大鼓にわかれており、最大の特徴は音の出し方です。ただ手で打ち鳴らすのではなく、少しコツが必要であり、本来の音が出せるようになるまで時間がかかるとも言われています。

また、鼓演奏者はその音を最大限に出すために唾などで皮の部分を濡らし、張りをゆるめます。皮が張ってしまうとその特徴とも言える音が出ない上に、水をつけるのでは直ぐ乾いてしまうので唾を使っています。

団扇太鼓(うちわだいこ)

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他の太鼓とは違い、胴がなく、円形の枠に膜を張った太鼓です。持ちやすいように作られた形状が団扇に似ていることから団扇太鼓と呼ばれ、バチで叩くとその大きさからは想像し難いドーンドーンと残響の残る音を出します。

◎和太鼓が出来るまで

今では1年以内に太鼓を完成させてしまう工房もありますが、太鼓は一般的に出来上がるまで最低3年は必要と言われています。

how-to-make-taiko
①玉きり・乾燥

太鼓の胴になる木材を適切なサイズに切ります。長胴太鼓の場合直径60㎝以上必要なことがあるので、樹齢100年以上の木を使うこともあります。
この過程で乾燥させることにより、木材が持つ水分を飛ばします。

②中抜き・荒取り

胴の部分を生成する為に、予め書いた図面に従いのこぎり等を使用し内部をくりぬきます。
中をくりぬいた後は、外側も削り、太鼓の特徴でもある綺麗な曲線を作ります。この過程を荒取り(あらどり)といいます。

③荒胴の乾燥

荒取りまで終わった状態の物を「荒胴(あらどう)」といいます。この荒胴を最低1年、最長5年乾燥させます。

④皮張り

太鼓の皮の部分は牛皮が使用されており、太鼓の大きさに応じてカットをします。
カットした皮に水分を含ませ、太鼓の型にかけます。この工程で作った皮は倉の中や棚の上などに保管しておくことが多いです。
太鼓にセットした皮を引っ張り、皮の表面を伸ばし、叩きながら音を確認します。その後に鋲打ち(びょううち)をして皮と胴を止めます。

⑤完成

今は仮止めの際に使用した皮の部分を残すところもありますが、最後に皮の縁を切り落とし、太鼓の完成となります。

kugiuchi

〜最後に〜

和太鼓と言っても、その種類は多く、それぞれ用途が違います。
普段お祭りや神社仏閣で目にするものはもちろんながら、特定の機会にしか使用されない太鼓も職人が一つ一つ魂を込めて作っている作品です。時代に合わせて発展してきた和楽器、和太鼓。お祭りなどで見るときはその音だけではなく、太鼓そのものにも是非注目してみてはいかがでしょうか。

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