染の高孝 高橋孝之

イノベーション(革新)を起こすには、守りぬいてきた既存のものから逸脱する度胸が必要だ。

それに果敢に挑戦し恐れないための技術と信念を備えた伝統工芸士がいるから、私達は飽くことなく作品を楽しみ感動し続けることができる。  

今回ご紹介するのは、東京手描友禅士の高橋孝之(たかはしたかゆき)さんだ。 高橋さんがインタビューで語って下さったことは以下に書き起こした通りである。 takahashi.eye

制作を続ける原動力:新しいものへの挑戦

「世の中の情勢が変化していくなかで、新しいものが必然的に要求されてきます。 それに対応するべく、色んな物にチャレンジしながら、作風まで変えるくらいの進化をしなくてはなりません。私自身も新しいものが好きですから、それを探して表現するのが楽しくて。それが原動力ですね」

技法への自負:発想の自由さ、異端の才

「私の場合父が引き染め(注釈1)をやっていて、兄が江戸更紗(さらさ)という型染め(注2)を生業としています。大抵、伝承というかたちで師匠から教わりながら身につけていくのですが、自分の作りたいものを頭で考えると、それだけでは収まらなくて、文献を読みながら試行錯誤して、独学のような形で手描き友禅をはじめたんです。だから、更紗と手描きと色んな物を組み合わせて自由な発想ができるのが強みだと思ってます」 高孝3

工房独自のもの:技法のデパート

「工房には、引き染めのために一反張れる場所がもともとあるので、墨流し(注3)や一珍染め(注4)をやることも可能でした。あらゆるアトリエや商品を見て、どうやってやったんだろう、どうやったらできるんだろうと、家で研究室みたいなことをして、そのなかから、自分なりに商品化できる技術を積み上げ、組み立てて新しいものを作ってきました。だから、懸念仕事という難しく変わった仕事でも、うちでは何とか物にして納めるというのをやっていました。友達に、技法のデパートなんて言われています」

こだわり:いたずらごころ、見た人をびっくりさせたい

「問題提起というのが制作において譲れないことのひとつです。新しいものを発表すると皆拒否反応を示してみたり、逆に感激してくれたりという反応が面白くて。相手がどうやってやったんだろうと思うような、今まで見たことのない、読めない作品を作って見た皆をびっくりさせたいんです」

この時に心に火が付いた!:意気揚々と搬入して、全員落選

「昔は問屋さんや小売屋さんの注文のもとで、ものづくりをしてたんですが、30代のときに独自のものづくりをしたいという思いが強くなってきたんです。そこで仲間が10人位集まって、『新樹会』というグループを設立しました。そのときは物凄く舞い上がって、賞金70万円くらいの公募展に意気揚々と搬入しに行きました。結果、全員落選して帰って来たんですが、それが非常に印象に残っていて、悔しいと同時に、心に火がつきましたね。そんな経緯が、面白さ、素晴らしさ、感動を追求していく制作へのきっかけになりました」

伝統の業を磨き、その上で時代のニーズを読みながら進化・発展への追求を惜しまない高橋さん。次回は、どんな作品で私達をアッと言わせてくれるのだろうか。 高孝4

※注釈リスト(上記で述べられた用語についてご紹介します)
1「引き染め」:生地に刷毛で塗り付ける染め方。均一に染めるには高度な技術が必要。
2「型染め」:型紙を使った染め方。異国情緒がある。型染めのひとつ江戸更紗は渋さが特徴。
3「墨流し」:墨を水に流して模様を描く技法、西洋ではマーブリングとも呼ばれる。
4「一珍染め」:小麦粉やうどん粉を用いた染め方。とても珍しい技法。
 

【Profile】
高橋 孝之(タカハシ タカユキ) / 染物師
父より引き染めぼかしと一珍染、兄より江戸更紗を習得する。
昭和58年に染織作家グループ「新樹会」を設立。
オフではモトクロスを嗜んでいる。

【染の高孝】
住所:東京都新宿区高田馬場3-9-1
電話番号:03-3368-7388
HP:http://www.some-no-takako.jp/index.html

 

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ABOUTこの記事をかいた人

Rie

東京都在住の文学部生。趣味は映画観賞、読書、絵画。ものの背景にある、歴史や作り手の物語を知るのが好きです。