釣り竿の中でも日本独自の製法で、今なお職人が1本1本を丁寧に作り続けている和竿というものがあります。
和竿と言っても、横浜竿・江戸和竿・郡上竿・川口竿・紀州竿・庄内竿のように、産地や特徴によっていくつかの種類があります。
その中でも、横浜竿の制作工程を竿好(さおよし)の吉澤均さんにお聞きしました。ご紹介していきます。
(吉澤均さんの記事はこちら「釣り好きが憧れる和竿の魅力とは」)
横浜竿とは
明治時代初めの頃、横浜の漁師が浜に群生していた竹(雌竹)を切り出し、日常的に使用していた提灯の柄(セミクジラのヒゲで出来ている)を竿の先に使い、道具として使い出したのが始まりです。横浜竿は海の小物竿の代名詞となっています。
こちらがセミクジラのヒゲを加工したものです。竿の先に使うため、細長く加工されています。
セミクジラのヒゲは見た目より軽く硬いものです。現在はとても貴重なので、グラスファイバーのものを使うことが多くなっています。
(セミクジラのヒゲとグラスファイバー)
工程紹介
1,竹を仕入れる
11~2月頃に竹を仕入れます。選定の際には、節と節の間隔が短いものをなるべく選びます。
2,下処理
節や芽をきれいに小刀などで取り、竹を洗って天日で乾燥させます。そのあとは3年程度室内で乾燥させます。これだけの竹を乾燥させますが、乾燥中に割れてしまうため使えるものはわずかです。
道具の小刀を見せていただきました。自分に合ったオーダーの小刀も使用されています。
3,火入れ
竹を火であぶり曲がりやクセを直し、素材を最大限に強く丈夫にします。
これは竹を曲げるための道具、矯(た)め木です。
矯め木には大小様々な大きさがあり、竹の太さに合わせて選んで使います。このように挟んで力を加えて曲げていきます。
4,切り組み
竿の設計をし、仕上がりの寸法になるように竹を切ります。
5,糸巻き
竹の補強と仕上がりの美しさをイメージして糸を巻きます。
6,漆塗り
糸の上から漆を塗ります。何度も重ね塗りをしながら仕上げていきます。
7,胴拭き
仕上げの漆を竿全体に薄く塗り、ムラができないように拭き取ります。
8,印籠芯(いんろうしん)
印籠芯を作り生漆で接着させます。印籠芯とは、竿と竿のつなぎ目に使う部分です。写真の真中の木の部分です。
9,中矯(なかだめ)
竿全体をつなぎ整え、火で炙り曲がりやクセを直します。
10,ガイドの取り付け
ガイド金具を付けます。漆を10回ほど塗り、整えながら接着させます。
11,口栓作り
つなぎ入れる口元が割れないように口栓を作ります。写真の木の部分が口栓です。しまっておく際に口栓をしておきます。ワインにコルクで栓をするようにはめこみます。
12,上げ矯(あげだめ)
竿全体をつなぎ、曲がりやクセをとる仕上げのための火入れをします。
13,肘あてをすげ込む
黒檀(こくたん)など比重の重い木を肘あてにし、釣りやすく先おもりしないようにバランスをとります。肘あてははずす事ができ、竿を持った際に自分の肘にフィットするように角度を調整することができます。美しさだけでなく、釣りやすさも追求されています。
14,完成
竹を乾燥させること3年、竹を竿にするまでに2~3ヶ月かけて完成です!
各々が理想とする「釣り味」を実現するために、細部までこだわりぬいた1本を作る和竿職人。20~30年は使えるように設計された逸品を、手にとってみてはいかがでしょう。
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