銭湯で味わう、風呂と人の温かさ

寒い。冬が近づいているのだろう。
この時期、凍えた身体をほぐしてくれるのは、何と言っても熱い風呂だ。
家の浴槽も良いが、もっと広い湯船にどっぷりと浸かりたくはならないだろうか?
今回は、日本の公衆浴場の一つ、「銭湯」と、その利用方法について、初めての方でも安心して使えるように詳しくご紹介しよう。

銭湯とは、料金を払うことで入浴できる、不特定多数の人が利用する共同浴場である。寺社仏閣のような外観と、高い煙突が目印である。
銭湯の起源は6世紀の仏教伝来まで遡る。仏教では、沐浴の功徳を説き、汚れを洗うことは仏に使える者の大切な仕事と考えられた。そのため寺院に浴堂が作られ、また、貧しい人々などを対象とした施浴も行うようになった。

鎌倉時代になると一般人にも無料で開放されるようになり、やがて入浴料をとる「湯屋」という商売が誕生する。その後、少しづつ変化しながら時代とともに発展し、現在の「銭湯」の形になった。

昔は男女別に浴槽を作ることは経済的に難しく、老若男女が混浴だった。時代が進むにつれ混浴禁止の法がしかれ、明治23年(1890)には完全に男女別浴となった。
ちなみに煙突の高さは、全国一律の75尺(約23m)と定められている。

それではいよいよ銭湯に行ってみよう。

◎持ち物

・バスタオル
・タオル
・石鹸
・シャンプー、リンス
・湯銭(入浴料金)

手軽なバッグなどに入れると良い。ただし、これらのものはほとんどの銭湯で販売(もしくは貸出)されているので、何も持参しなくても大丈夫だ。
タオルならば¥200~、他のものは¥30~ほどで買うことができる。
また、入浴料金は各都道府県ごとに違う。東京都では、大人(中学生以上)¥460、中人(小学生)¥180、小人(未就学乳幼児)¥80である。(平成26年11月24日現在)

◎利用方法

①男湯と女湯を間違えないように中に入ろう。入り口からすでに分かれているので、暖簾や扉で確認しないと、恥ずかしいことに…。

②履物を脱ぎ、下駄箱に入れよう。施錠する札を抜いて管理すること。ただし、ブーツなどの大きい靴は入りきらないかも。

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③番台で入浴料金を払い、脱衣場へ向かおう。小銭をあらかじめ用意しておくと、スマートに払える。1万円札はさすがにちょっと…。
※番台とは、入口付近に設けられた見張り台のこと。湯銭のやりとりや脱衣場の見張りに使われる。

④衣服を全て脱ぎ、タオルを持って浴室へ。ロッカーが設置されていない場合は、貴重品を番台に預けたほうが良い。盗難は意外とあるのだ。

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⑤まずは蛇口の湯を桶に取り、掛け湯をしよう。
※掛け湯とは、湯船に入る前に体に湯をかけること。お湯に体を慣らすと共に、体の汚れを落とし、皆が使う浴槽をきれいに保つため。

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⑥さあ、浴槽に浸かろう。熱いお湯は5〜10分程度、ぬるいお湯は20分程度が適切な入浴時間だ。湯船のお湯は、みんなのもの。長い髪やタオルは湯につけないように注意しよう。

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⑦浴槽から出て、体を洗おう。お湯と水は別々の蛇口になっているところが多いので、お好みの温度に調節できる。シャワーや蛇口のお湯を出しっぱなしにしたり、使った桶やイスを放置するのはマナー違反だ。

⑧濡れた体をタオルでよく拭いてから脱衣場へ戻ろう。濡れたままだと、脱衣場がビショビショに…。

⑨仕上げにバスタオルでもう一度体を拭いて、服に着替えよう。まだ暑い時は、裸のまましばらくウロウロするのもいいだろう。

⑩水分補給などをして、ゆったりとくつろごう。飲み物は番台で買えるが、オススメはビン牛乳。タオルを巻いた腰に手を当て、胸をそらして一気に飲み干すのは、風呂あがりの醍醐味なのだ。

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⑪荷物置き場や洗い場の棚に忘れ物がないか確認し、帰路につこう。

◎豆知識

1)浴室の壁に描かれるペンキ絵は富士山などが代表的であるが、描いてはいけない3つのタブーが存在する。

・夕日→商売の斜陽をイメージ
・猿→客が去る(サル)
・紅葉→秋(飽き)が来る

2)コインランドリーを併設している銭湯も多いので、洗濯をしながら湯に浸かることもできる。

3)身体に刺青が入っている場合は入浴を断られる場合がある。

昔から銭湯は、上下の区別なく裸の付き合いができる庶民の憩いの場であった。
そこには、ただ湯に浸かり、身体を清潔にするだけでない、独特の空間が広がっている。
あなたも是非この機会に訪れ、銭湯が持つ魅力の一端に触れていただきたい。

 

参考:
東京都公衆浴場業生活衛生同業組合
大田浴場連合会公式

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