繊細さと忍耐の結晶、伊勢型紙ー宮崎正明ー

伊勢型紙は、三重県の伝統的工芸品です。
流通しているほとんどが三重県で生産されている中で、神奈川県横浜市で作り続ける一人の職人がいます。
今回は製作はもちろん、教室運営を通して師匠から受け継いだワザや伝統を後世へ伝え続けている宮崎正明(みやざき まさあき)さんにお話を伺いました。

(伊勢型紙のご紹介はこちら「型紙の枠を超えた芸術品―伊勢型紙―」)

型紙の枠を超えた芸術品ー伊勢型紙ー

2015.11.10

◎宮崎さんの経歴を教えて下さい

私は元々区役所の職員でした。
千葉県市原市出身なんですが、高校を出た後に航空自衛隊に入り、3年間勤めた後に区役所職員になりました。区役所で勤め始めると同時に夜間の大学に通いました。
大田区役所に勤めていた、そして今も蒲田で教室をやっていることから、今は「大田区伝統工芸発展の会」に所属しています。

◎伊勢型紙の制作をはじめたきっかけ

私の師匠である小林一(こばやしはじめ)先生の作品に出会ったのはもちろん、区役所に務めていた時の先輩もきっかけです。
先輩は染めをやっており、退職の記念に何か渡したいと思い、卒直に何が欲しいか聞いたら「型紙が欲しい」と言われました。型紙を探している時に先生の展示会と出会い、先生に型紙を売って欲しい、そしてこれ(型紙)はそもそも何なのかと聞いたのが始まりですね。
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先生のお話を伺う中で、人の手でこのような作品が作れるのは凄いと思い、自分も作ってみたいと思い先生に弟子入り出来ないかお願いしました。

◎区役所のお仕事と伊勢型紙のお勉強をどのように並行していたのですか

朝から夕方まで区役所で仕事をし、その後に先生の工房があった上野に行って教わっていました。
だから、朝8時から5時くらいまで区役所で仕事して、6時から9時前後まで勉強、その後帰宅みたいな生活をしてました。
先生は金・土・日曜日に教室を開講していたんですが、他の生徒さんもいるとどうしても集中出来なかったり、早く技術を身につけたいという想いから平日の夜通っていました。先生を独り占めできて、習うには効率良かったですね。なので週末を利用して自宅でワザを磨いたり、研究を重ねていました。

◎伊勢型紙制作の第一歩はどのような感じなのですか

私の場合、最初から図柄は彫らせてもらえませんでした。
最初は1円玉を彫るところから始まりました。丸い形状であることがカギで、始めた頃はなかなか綺麗な円を彫ることができず、ぼこぼこしたものでした。
その後ずっと、滑らかな曲線を描けるまでやってました。まさに、職人らしいスタートですよね。
小刀での彫りに慣れると、ワンポイントの彫りを始めました。そこからワザを磨き、いろんなものを彫れるようになりました。
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宮崎さんが型紙製作において欠かせない小刀や彫刻刀たち

◎制作の面白いところや続ける原動力はなんですか

一歩でも先生に追いつきたいって想いですね。
先生の彫るペースで自分も彫りたい、それが一番強いです。
そしてなにより憧れですね。先生の作品に惚れ込んで弟子入りした部分もあるので、先生から教わったことを形にし、ある意味継承する。それがいつも私の中にあります。

◎宮崎さんが思う“伊勢型紙”の魅力はなんですか

繊細さです。
ものすごく細かい柄を人が一つ一つ手作りでやっているのは驚きであり、毎回感動します。
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例えば鮫小紋。これは鮫小紋に使われる型紙なんですが、着物を染める際に柄がズレないように目印があるんですよ。この目印も計算されていて、一つ一つ手で付けられています。この目印を頼りに型紙を動かしていくと綺麗な柄が出来るようになってます。
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◎宮崎さんならではのこだわり

妥協しないことです。型紙も他の工芸品でもあるように手抜きだったりを見抜くことって出来るんですよ。
見ると線が真っ直ぐ引かれていない、柄が少し雑であったりするとこがどうしても分かってしまうんです。なので、私の作品を見た人がこのように思わないように、そして見て感動して欲しいので妥協は許しませんね。
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◎最後にMikoshi Storys読者へメッセージをお願いします

若者はもちろん、みなさんもっと着物を着て欲しいなと思います。
東京手描友禅などの手描きのものもありますが、多くが型紙を使用したものとなっています。着物はもちろん浴衣も。
着物を着る人が増えるということは型紙で作った柄を目にする機会が増えるので。そして、その後に型紙にも是非興味を持っていただきたいですね。

型紙の枠を超えた芸術品ー伊勢型紙ー

2015.11.10
バージョン 2

【プロフィール】
宮崎 正明(みやざき まさあき)
千葉県市原市出身。
大田区区役所に勤務するかたわら、小林一さんから伊勢型紙について教わる。
現在、伊勢型紙技術保存研究会の代表を務める。

【伊勢型紙技術保存研究会】
住所:〒221-0833 神奈川県横浜市神奈川区高島台19−4
Tel:080-5431-3515
Mail:masa330@d2.dion.ne.jp