十年に一度の大開帳!迦葉山参拝

鼻が高く赤ら顔、山伏の装束に身を包み、自在に空を飛ぶ天狗。
神とも妖怪ともいわれる伝説上の生き物ですが、“天狗のお山”があるのを知っていますか? その名も「迦葉山(かしょうざん)」。

今回は、その地で古くから天狗を祀るお寺と、十年に一度の大開帳の様子をご紹介いたします。

◎迦葉山について

迦葉山は正式には「迦葉山龍華院彌勒護国禅寺(かしょうざん りゅうげいん みろくごこくぜんじ)」といい、豊かな自然に囲まれた群馬県沼田市にあります。嘉祥元年(848年)に、桓武天皇の息子である葛原親王の発願により慈覚大師円仁の手で建立されました。

今では東京の高尾山薬王院、京都の鞍馬寺とともに日本三大天狗の一つとなっている霊峰です。

◎天狗伝説

昔、曹洞宗の天巽(てんそん)禅師に従って中峯尊者という高僧が迦葉山に来ました。伽藍(がらん)造営の大事業から布教伝道まで大いに努め、また山頂の岩屋や険しい岩山など人力では到底登れないような所まで開き修行者を導くなど、非凡な神通力を持っていました。十年一日のごとくその容姿は変わることがなく、神童といわれました。

ある日、自分が実は迦葉尊者の化身であること、そして役目を終えたので昇天し、人々のため苦しみを除き楽しみを与えることを告げ空に飛び立っていきました。すると、その後に天狗の面が残されていたということです。以来、開運守護のお天狗様として崇められ、信仰の中心となっています。

天狗

◎旧参道

登山口からはしばらく農村地帯が続き、道が広くなり車道と分かれるところから旧参道の山道が始まります。立派な山門を抜け参道に入ると、杉の巨木が続きます。

山門 石像

途中には天狗の石像や、1丁(約109m)ごとに山頂までの距離を教えてくれる丁石・石仏があり、参拝者を迎えます。また、道に落ちている羽団扇のような葉っぱや、ところどころにある真っ赤な橋が、天狗への想像を膨らませてくれます。

石像 橋

◎馬かくれ杉

参道を上り切ると右側に沼田市指定天然記念物の「馬かくれ杉(うまかくれすぎ)」があります。高さ29m、樹齢約1000年のこの杉は、幹の一部が空洞化しており中に入ることができます。昔は参道の下方で馬から降りなければならなかったため、こっそりここまで馬で登り、馬を隠しておいたのでこの名が付いたといいます。

馬かくれ杉

◎中峯堂と大開帳

迦葉山の中腹、標高900mに彌勒寺はあります。なかでも「中峯堂(ちゅうほうどう)」は鎮守様を祀る山岳造りの建物で、正面入口左側には昭和14年、46年に地元有志によって奉納された二体の身代わり大天狗が安置されています。

天狗

顔の丈6.5m、鼻の高さ2.8mにもなる巨大な天狗面はすさまじい迫力です。ほかにも願掛けの人達が納めた天狗面が多数祀られていますが、これは迦葉山独特の「お借り面・お返し面」によるものです。

迦葉山参りでは、「最初の年に天狗面を借りて帰り、次の年に借りた面を持ち、さらに門前の店で新しい面を買い、計2つの面を寺に納めまた別の面を借りてくる」というならわしになっています。面の大きさも様々なので、お参りするたびに少しずつ大きくしていくのが良いそうです。

奉納 天狗

木造の天狗様に挟まれて、ご本尊に通じる階段と、祭壇があります。階段は全て合わせて108段あり、これは人が持つ煩悩の数を表しています。祭壇の中央に垂れている紅白の布がご本尊の左手とつながっているらしく、お参りの際はこれを握るようになっていました。

天狗の木造 祭壇

4月28日~5月28日の1ヶ月間限定ですが、十年ぶりに開かれている中峯堂奥殿に入り、お天狗様を間近で拝める機会はとても貴重です。また、毎年8月3日〜5日には女性だけで日本一大きな天狗みこしを担ぐ「沼田まつり」があるので、この機会にぜひ一度迦葉山を訪れてみてはいかがでしょうか。

 

フォローしていただくと、更新情報を受け取ることができます。

「ものがたり」を共有する...